平成20年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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地域連携部会 活動報告連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告271. 平成20年度研究活動の計画 定置式燃料電池要素の技術的課題解決の第1ステップとして、定置式燃料電池システムの要素技術である次世代高温型電解質膜・白金低減電極触媒・低温型SOFC電極の開発を行う。また、新しく開発した主要材料を用いてMEA(膜電極集合体)を調製する場合に性能の最適化を行うための、MEA調製法の各種診断技術の開発を行う。さらに、新しく開発した主要素材を用いたMEAシステムの性能の安定性を評価するために、必要な燃料電池性能劣化診断技術の開発を行う。2. 次世代高温型電解質膜の開発-リン酸処理石膏-GPTES系固体電解質膜の作製と評価- 本研究では、150℃に加熱しても高いプロトン伝導性を維持するリン酸処理石膏に注目した。これをグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(GPMDES)を用いて複合化した薄膜を作製し、その電池特性を評価した。これらは、ゾル-ゲル法によって膜状に成形でき、作製した膜はGPTES によって三次元的な構造を持ち、GPMDESの直鎖形重合によって柔軟な膜となる。複合膜の耐熱温度は160℃であり、目的とする150℃付近の温度領域に耐えられることが分かっている。 実験方法は次の通りである。まず、リン酸処理石膏-GPTES 系電解質膜の作製については、 17wt%リン酸水溶液と焼き石膏の粉末を1:1の重量で混合させたものを80℃で一週間乾燥させ、これを200℃で熱処理することでリン酸処理石膏を得た。複合化に関しては、GPTES, GPMDES, 2-プロパノールを攪拌したものに60wt%のリン酸処理石膏を加え、さらにここに1mol/L の塩酸を加えて7日間攪拌した後、80℃で乾燥させることで行った。作製した試料について、フーリエ変換赤外分光分析法(FT-IR)によって内部構造の評価を行い、膜電極接合体(MEA)を作製し、燃料電池特性評価試験を行った。 リン酸過剰処理による電気伝導率の影響については、次のことがわかった。使用した焼き石膏の重量に対して、過剰量のリン酸水溶液を使用してリン酸処理石膏を作製することで電気伝導率に影響が出るかを検討した。焼き石膏とリン酸水溶液を30分間攪拌し、これを濾過したものを200 ℃で熱処理することで過剰リン酸処理石膏を得た。今回、焼き石膏に対して1~6倍の過剰度について検討し、上記と同様の方法で膜化したものを交流インピーダンス測定により測定した室温大気中における電気伝導率を図1に示す。無加湿条件下で、10-4S/cmの非常に高い電気伝導率を示すことが分かる。 作製した膜のFT-IR測定結果より、GPTES, GPMDES に由来するシリカ類似構造と、エポキシ開環による有機鎖状構造の導入が確認された。1000cm-1付近のCH2を含む結合とCaSO4由来のピークの中にはHPO4のピークも混在している。膜内にこれらの結合が見られたため複合化はされている事が推測できる。作製膜の電池特性評価は、次の通りである。MEAにおける触媒層として、プロトン伝導体としてのリン酸処理石膏と白金を混合させたものを使用した。測定結果から、約0.8Vの開回路電圧が得られ、最大電流密度約65mA/cm2の時、最大出力密度約20mW/cm2が得られた。電圧が0.5V程度になるまで電流値が生じなかったのは、触媒中の白金の反応が不十分であったことに■教育研究部会 活動報告 研究小委員会定着用燃料電池の要素技術課題解決武蔵工業大学 工学部 教授 高木 靖雄図1 リン酸と焼き石膏の比率と電気伝導率の関係

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