平成20年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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地域連携部会 活動報告連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告28起因していると考えられる。改善の方法としては、触媒層中の白金・リン酸処理石膏の組成を変化させることで触媒層からプロトンを効率よく生じさせ、膜内へと伝達できるように十分に三相界面を得る事が考えられる。 3.白金低減電極触媒の開発-カーボンナノシェルを用いた固体高分子形燃料電池用非白金系カソード触媒の調製と評価- 近年、微細な球殻状構造を持つ炭素材料(カーボンナノシェル)は酸素還元活性をもち、多孔質化やホウ素・窒素などのドーピングによりさらなる活性の向上が見込めることが報告されている。これらカーボンナノシェルの特性は固体高分子形燃料電池のカソード反応において有効で、高価な白金触媒に替わる新しい電極材料の創生につながる可能性が期待される。そこで、本研究ではフルフリルアルコールとフェロセンからカーボンナノシェルを調製し、その酸素還元活性について検討を行った。 試料の合成には、フルフリルアルコールにフェロセンを溶解させ、塩酸を開始剤として80℃で72時間重合を行った。得られた黒色固体は粉砕後700℃で焼成し、さらに6M硫酸の処理によりFeの除去を行った。表1に示すとおり、フェロセンの添加量(Feの混合割合)と焼成時間を変えた試料を作製し、調製条件が構造や物性に与える影響について評価した。 作製した試料の構造解析はXRD、SEM、TEMおよびBET吸着法で行った。酸素還元活性は酸素を溶解させた0.1 M硫酸水溶液を用い、ボルタモグラムの測定から評価した。作製した試料をTEMにより観察したところ、いずれにおいても20〜30nm程度のナノシェル構造が確認された。フェロセン添加量の異なる試料を比べるとナノシェル構造はcFe(2)に多く現われ、焼成時間については1時間の試料においてナノシェルの成長が不十分であることが観察された。図2に各試料の酸素還元ボルタモグラムを示す。酸素還元活性は焼成時間の短い試料の方が高い傾向が見られ、中でもフェロセン混合率が1%のときに最も高い性能が得られた。これはナノシェル構造を形成するグラフェンの層が短く表面の欠陥が多いためと考えられることから、この部分が酸素還元の活性点となることが示唆された。4. PEFC用電極調製法の開発 電解質膜、電極触媒など新しく開発する主要素材を用いてMEAを調製する際、出力性能を最大に引き出しかつ性能の安定性を確保するため、平成20年度は出力性能や性能の安定性が確保されている電解質膜Nafion212、電極触媒Pt/Cを用いてデーターベース作成やMEA調製時の各種条件の感度確認を行った。白金担持量はアノードとカソードがそれぞれ0.45mg/cm2、0.30 mg/cm2で行い以降この仕様を本研究の基準値としていく。またこの仕様による出力性能は作動温度80℃、相対湿度両極とも100%の条件に図2 各試料の酸素還元ボルタモグラム(電流密度の値はBET吸着から求めた表面積で標準化)表1 試料の調製条件

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