平成20年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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地域連携部会 活動報告連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告34チルピリジンを用いると、透過ガス中の酸素濃度は最も高い30.8%を示し、このコバルトポルフィリン機能層の酸素濃縮能が確認された。アミンの構造の違いによりアミンのコバルトへの配位状態が変化し、酸素の結合—解離速度に影響を与えたと考えられる。また、このときの透過ガス流量は0.05〜0.2ml/(cm2 min)であり、これまで使用していた4-ヒドロキシメチルピリジンの場合(0.01ml/(cm2 min)よりも大きいことが確認できた。この透過ガス流量はコバルトポルフィリンと錯形成した際のクロロホルム溶媒への溶解性が変化することで、支持膜表面に塗布した溶液の液膜の厚さが異なったため乾燥後の機能層の厚さが変化したことで生じたのではないかと推定される。 以上のことから、市販のコバルトテトラフェニルポルフィリンと芳香族アミン、ポリブチルメタクリレートを混合、塗布することで簡便に酸素富化膜が作製できた。今後、芳香族アミンを選択し、また溶液濃度、混合比を検討することにより、より高い流量を保持したまま酸素濃縮を効率良く行う酸素富化膜を作製できる可能性が見いだされた。研究成果報告:PEFC用炭化水素系電解質膜の機械的特性の向上駒崎 慎一(材料物性工学科)研究の目的: PEFCに最も広く用いられているNafion膜は、優れた機械的特性、良好な保水性、高いイオン伝導性といった優れた特徴を有している。しかし、炭化フッ素系であるため廃棄処理が困難である、室温でのイオン伝導性が低い、また高価であるといった欠点を持っており、携帯端末機器用の開発は進んでいない。Nafionの欠点を克服するために開発された炭化水素系のAMPS(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)膜は、室温における出力が大きい等の優れた性質を持っているものの、機械的特性が著しく劣るという最大の弱点を有している。 本研究では、優れた機械的特性を有する炭化水素系電解質膜の開発を目的として、AMPSにポリビニルアルコール(PVA)とポリエチレングリコール(PEG)を加えた新しい三元混合膜の作製を試みた。PVAは非常に親水性が高く、膨潤を抑制させる効果があると考えたためである。また、架橋させる対象をAMPSからPVAに変えることにより、強度向上が期待された。平成20年度は、まずは三元混合膜の作製を試みるとともに、作製した電解質膜の引張試験を行った。研究実施の方法: 三元混合膜の作製方法は次のとおりである。6.0wt%PVA、7.5wt%PEG、15wt%AMPSを混合させた溶液を、ガラス板上に設置した60×60×1 mmの型をとったシリコーンゴムに流し込み、平面キャストを行った。60℃、6hの大気圧下で乾燥させた後、アセトン10wt%GA溶液を塗布して架橋させた。その後、数時間乾燥させ成膜した。成膜後、密閉容器に水を入れたビーカーと三元混合膜を入れ、24時間放置したものを評価の対象とした。 三元混合膜の機械的特性評価に引張試験を用いた。引張試験機は株式会社島津製作所のEZ-Test EZ-S(最大荷重5N)を使用し、試験片サイズ10×40 mm、標点距離20 mm、引張速度0.2 mm/s、温度20℃で試験を行った。膜厚の測定にはマイクロメーターを使用した。10×40 mmに切り出した試験片を、ランダムに10点膜厚を測定し、その平均を試験片の膜厚とした。三元混合膜は水分を含むと表面にぬめりが生じるため、引張試験時に滑り落ちないようにチャック部に摩擦力の高いエメリー紙を使用した。加えて、電池特性を調査するため、ガルバノスタットを用いてI-V曲線を測定した。研究成果: 三元混合膜の応力-ひずみ曲線を計測した結果、現時点では試験結果の再現性はまだ十分であるとは言えないが、資料 ▷ P134

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