平成20年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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地域連携部会 活動報告連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告36物理的、化学的処理を行った後CNT合成に供した。 配向性CNT電極の調製は、高周波スパッタ装置を用い約20nmの膜厚のCoあるいはFe薄膜を蒸着させた基板(石英、カーボンペーパー(CP)およびカーボンクロス(CC)等)を電気炉内に設置し、窒素および所定の混合ガス雰囲気下で熱分解CVD法により作製した。このときの炭素源は、アルコールあるいはエチレン系炭化水素である。反応温度は、600℃〜1000℃、反応時間は5〜60分である。さらに、水素電極用のCNTは、所定のガス雰囲気下で、CNTの開口処理や官能基や欠陥の導入により化学修飾を施した。・ CNTの分散: メタンガスおよび天然ガスを炭素源にしてCVD法により触媒上に合成したCNTを、超音波照射下で化学薬品処理を施して触媒および担体を除去し、さらに薬品で酸化処理をして不純物を取り除いた。この後、化学修飾を行い所定の溶媒(水溶液系、非水溶媒系)に分散し、これを超遠心分離機により分級して分散液を調製した。・ 電気化学特性: 試験CNT電極には、直接基板材料上にCNTを合成した石英/配向性CNTs、CP/CNTs、および所定CNTの分散液からフィルター上に調製したCNTs/フィルターを用いた。これら電極の(a)酸素および(b)水素電極特性は、1 mol dm-3 KOH 水溶液中心に用い、23℃でサイクリックボルタンメトリー(CV)により全体的挙動を把握し、次に複素インピーダンス法(EIS)およびダイナミックインピーダンス法により電極/電解質界面の動的挙動について検討した。参照電極には銀/塩化銀電極、対極には白金線を用いた。 (a)�酸素電極特性:酸素のカソード極特性は、酸素および窒素ガス雰囲気下で、中間生成物である過酸化水素の分解反応も含めて検討した。 (b)�水素電極特性:所定の電極電位における水素の電気化学的吸蔵・放出反応の動特性を窒素ガス雰囲気下23℃で検討した。・ CNTのキャラクタリゼーション: 合成したCNTの幾何学的形および化学的状態は、SEM、TEMおよび顕微ラマン分光法により行った。また、熱分析(TG)により合成したCNTの純度についても検討した。・ H2−O2燃料電池特性: ナフィオンを用いた固体高分子型燃料電池を製作し、電池特性(放電特性と電力特性)および両電極のインピーダンス特性を検討した。研究成果:・ CNTの合成: CNT合成に供したどの炭素源からもCNTを合成することに成功した。幾何学的形状、化学的特性およびCNTの純度は、炭素源に大きく依存した。エチレン系炭化水素を炭素源として合成したCNTは、チューブ径約100nm、長さ約20μmの良好なフォレスト密度を持った垂直配向性を示した。アルコールを炭素源にする場合も同様な垂直配向性CNTが得られるがその径はかなり小さい。一方、廃タイヤを炭素源にして合成したCNTは、抽出油の化学的性状が重要で、CNT forest密度や形状・性状に大きな影響を与えることが判明した。垂直配向したものを得るにはさらなる検討が必要である。また、CPやCC上にもCNTを直接合成できた。・ ラマンスペクトル: アルコールを炭素源としたCNTの典型的ラマンスペクトルでは波数1580 cm-1付近のグラファイト構造を示すGバンドと波数1360 cm-1 付近のDバンドが観測され、不純物および欠陥の存在が示唆される多層CNTであることがわかった。しかし、合成条件を選ぶことによって波数200 cm-1 領域にラジアルブリージングモードを示すスペクトルが観測され、単層CNTの合成が示唆された。他の炭素源によるCNTではラジアルブリージングモードを示すスペクトルは観測されず、合成時にはより小さなIG/ID値を持つ多層CNTであった。

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