平成20年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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地域連携部会 活動報告連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告41る。水素の製造法としては化石燃料の水蒸気改質反応が広く行われているが、その過程においてCO2が副生する。そのため、CO2を副生しない新規の水素製造法の開発が望まれている。我々は金属加工時に生じる切削くずなどの廃アルミニウム材からCO2を副生せずに水素を得る方法として、アルミニウム(Al)と水とのメカノケミカル反応による水素製造に注目している。そこで、本研究では効率的な水素の製造を行うために必要な基礎的な研究および実用化を目指したスケールアップについて検討を行った。研究実施の方法: アルミニウムと水との水素生成反応に対する添加物の影響はガラス製水素発生装置(反応容器体積:100ml)を用いて検討した。反応はアルミニウム(1.0または2.0g)および蒸留水30mlを平底フラスコに入れ、マグネチックスターラーで攪拌することによって行った。アルミニウムは市販の粉末状試薬を使用し、添加物として高硬度物質および水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を用いた。 本方式での水素製造の実用化に向けて、ステンレス製反応装置の試作および試運転を行った。反応器には市販の小型反応器(反応容器体積:100ml)および本研究で試作した大型反応器(反応容器体積:2000ml)を用いた。なお、小型反応器を用いる場合には粉末状試薬、大型反応器の場合には切削くず(廃アルミニウム)をアルミニウムとして使用した。研究成果:・ 水素生成反応に対する添加物の影響 Alと水との水素生成反応を行った結果、2gのAlから約2.6LのH2が得られ、H2以外の生成物はAl(OH)3であることをXRDパターンの測定結果より明かにした。これより、下記の反応式(1)で水素が得られることがわかった。また、この反応には20時間弱と非常に長い誘導期がみられた (図1)。SEMによる観察結果から、この誘導期はAl粒子表面のAl2O3被膜が攪拌により除去されるために必要な時間であると考えられた。そこで、この誘導期を短縮するため、高硬度物質および水酸化アルミニウムなどの添加を行った。その結果、いずれの場合においても誘導期の短縮効果が確認された(表1および表2)。これら結果は、Al2O3被膜の効率的な除去により誘導期の短縮効果が得られたためであると説明できる。以上のことから、Alと水との水素生成反応のメカニズムを解明し、効率的に水素を得る方法を明らかにした。2Al + 6H2O → 2Al(OH)3 + 3H2…(1)図1 アルミニウム(2.0 g)と水との水素生成反応における誘導期High hardnessmaterialAmount ofaddition (g)Induction period (h)No addition─21.4BN38.047.4612.8SiC610.9810.51021.910表1 アルミニウム(2.0 g)と水(30ml)との水素製造反応に対する高硬度物質の添加効果Al(OH)3addition (g)pHInduction period (h)06.1119.63210.461.51410.631.31610.741.03810.800.891010.970.6410表2 アルミニウム(1.0 g)と水(30ml)との水素製造反応に対するAl(OH)3の添加効果

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