平成21年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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地域連携部会 活動報告連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告30 現在実用化が進められている固体高分子形燃料電池の課題であるシステムの簡略化とコスト低減を実現するために、作動温度をより高温化する中温動作電解質膜と白金使用量を大幅に低減することのできる電極触媒の開発、およびこれらの新しい素材を用いたMEA化などのシステム化技術を開発する。2.1 中温動作電解質膜へのニーズ 通常のPEFCは、電解質膜内のプロトン伝導に水が必要であるため水の沸点である100℃以下の温度で運転されている。動作温度を上昇させることで解決できる課題としては以下のような事項がある。 ・燃料水素ガス中に含まれる一酸化炭素による触媒の被毒 ・白金触媒の埋蔵資源量と価格高騰 ・過剰な水により反応が停止する電極の水分管理 ・外気温と動作温度との差が小さいことによる廃熱困難 しかしながら、現行のパーフルオロスルホン酸系高分子膜は膜内のイオン伝導に水を必要とするため、100℃以上ではイオン伝導率が低下し、出力も低下する。このため、100℃以上の温度領域で動作するプロトン伝導膜が必要とされている。このような中温動作電解質膜の研究例としては、パーフルオロスルホン酸系高分子膜の改良や、炭化水素系高分子膜、無機・有機複合電解質膜の開発などが行われている。また、PEFCでは必須であった加湿機器類を省略できる非水条件・無加湿条件・反応により生じる水のみで動作する自己加湿条件での運転が可能であることも望まれている。2.2 リン酸処理石膏電解質膜の開発 本研究では、2006年にプロトン伝導性が報告されたリン酸処理石膏をプロトン伝導体とした電解質膜の研究を行っている。石膏は硫酸カルシウムの半水和物(CaSO4・0.5H2O)で水と反応することで2水和物(CaSO4・2H2O)となり固化することから、建材や工作用途などに広く使われている。石膏自体にはプロトン伝導性は無いが、石膏をリン酸水溶液で硬化させたリン酸処理石膏は無加湿条件下で室温から300℃までの広い温度範囲において高いプロトン伝導性を示している。リン酸処理石膏の問題点としては、石膏が針状結晶であるためにガス遮断性がなく燃料が透過することと、柔軟性に欠けるため衝撃に弱いこととがある。本研究では、リン酸処理石膏をイオン伝導体として用い、シリコーン系の基材を複合化することで柔軟性とガス遮断性を付与した無機・有機複合電解質膜の開発を試みた。2.3 リン酸処理石膏電解質膜の評価結果 リン酸処理石膏を変性シリコンオイル及びシランカップリング剤と混合し、得られた粉体を減圧条件下で加熱加圧することで平板状の試料を得た(図1)。得られた電解質膜は2.7×10-4 S/cmのイオン伝導性を示し、燃料電池運転試験中の空気極排ガス中に水素ガスが検出されなかったことからガス遮断性も獲得できたと考えられる。粉体と炭素担持白金触媒粉末との混合圧粉体電極を用いた燃料電池試験でも0.5 mW/cm2の出力密度が得られ(図2)、温度上昇とともに出力が低下する傾向があるものの110℃まで無加湿条件下にて起電力が得られることが確認できた。 今後の課題としては、更なる導電率の向上が挙げられる。実用化の基準をパーフルオロスルホン酸系高分子膜の■教育研究部会 活動報告 研究小委員会定着用燃料電池の要素技術課題解決(第2ステップ)東京都市大学 工学部 特任教授 高木 靖雄1. 技術開発のスコープ2. 中温動作電解質膜の開発図1 リン酸石膏系複合膜図2 燃料電池試験結果

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