平成21年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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地域連携部会 活動報告連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告31導電率である10-2 S/cmオーダーとすれば、この数値の達成が目標となる。リン酸処理石膏は既報1)では10-2 S/cmの導電率が得られているため、膜の基材と複合化させることで導電率が低下したと考えられる。現在、プロトン伝導性を持つリンケイ酸塩系材料を基材として膜を作成しているが、複合化時に石膏とリンケイ酸塩のそれぞれのリン酸の量の変化が起こり導電率が低下したと考えている。今後は試料内部のリン酸石膏・基材それぞれのリン酸の状態を観察することで、性能向上への指針を得ることを目指している。2.4 リン酸処理石膏電解質電極の評価結果 中温動作形燃料電池のもう一つの大きな課題は電極作成手法の開発にある。現行のPEFCでは電解質膜材料であるパーフルオロスルホン酸系高分子を有機溶剤に分散させた分散液を触媒の結着と電極内部のイオン伝導を担うイオノマーとしている。現時点では非常に高い性能が得られているが、水の沸点以上の温度領域では電解質膜と同様に性能が低下する。そのため、中温動作形燃料電池のための電極の開発も大きな課題となっている。電極では、電子の移動・イオンの移動・燃料等の物質移動の3者を共存させる必要があるため、緻密である必要のある電解質膜とは異なる作成手法が必要である。我々のグループではリン酸石膏系電解質膜と併用することを目的とした電極の開発を開始し、その初期の成果を2010年3月下旬の日本セラミックス協会年会にて発表する予定である。3.1 アプローチと実験方法 近年、微細な球殻状構造を持つ炭素材料(シェル状カーボン、SLC)は酸素還元活性をもち、多孔質化やホウ素・窒素などのドーピングによりさらなる活性の向上が見込めることが報告されている2) 。これらSLCの特性は固体高分子形燃料電池(PEFC)のカソード反応においても有望で、高価な白金触媒に替わる新しい電極材料の創生につながることが期待される。そこで、本研究ではフルフリルアルコールとフェロセンからSLCを調製し、その酸素還元活性について検討を行った。 フルフリルアルコールにフェロセンを溶解させ、塩酸を開始剤として80℃で72時間重合を行った。生じた黒色固体を粉砕後700℃で焼成し、さらに6M硫酸処理によりFeを除去してSLC触媒を得た。以上のプロセスにおいて、フェロセン添加量(Fe質量比換算)や焼成時間を変えた試料を作製し(表1)、触媒構造や物性への影響について検討した。 作製した触媒の構造解析はXRD、SEM、TEMおよびBET吸着法で行った。酸素還元活性は、酸素を溶解させた0.1M硫酸水溶液を用いたボルタモグラムから確認した。PEFC用カソード触媒としての性能は、セルにH2とO2を共に200ml min-1供給し、70℃運転でのV-I 特性から評価した。3.2 評価結果 TEM観察より、作製した触媒はいずれも20~30nm程度のシェル状構造をもつことが確認された。フェロセン添加量の異なる試料を比べると、シェル状構造は添加量の多いSLC(2)に多く見られた。また、焼成時間の短い試料(1 h)ではナノシェルの成長が不十分であることが観察された。図3に各触媒の酸素還元ボルタモグラムを示す。酸素還元活性は焼成時間の短い試料が高く、中でもFe添加量1wt%のとき最も高い性能が得られた。この試料はナノシェル構造を形成するグラフェン層が最も短く表面欠陥が多いことから、酸素還元活性に対して有効にはたらいていると考えられる。 このSLCをカーボンブラックと7:3の質量比で混合した触3. 炭素系PEFC用カソード触媒の調製と酸素還元活性表1 シェル状カーボンの試料名と調製条件Current density / μAm-2 図3 各資料の酸素還元ボルタモグラム。電流密度はBET吸着から得た

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