平成21年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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■教育研究部会 活動報告 研究小委員会地域連携部会 活動報告連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告39 マグネシウムは比重が1.74と小さく、7.6mass%もの水素を溶解して水素化物(MgH2)を作るため、軽量水素吸蔵合金の基合金として期待されている。しかしながら、水素との反応速度が遅く、また高温でのみ水素と反応するため、水素吸蔵温度の低下と表面反応速度の向上が求められている。このためにはマグネシウムにニッケルを添加しMg-Ni合金とすることが有効であることを明らかにした。今年度はニッケル添加量の比較的少ない亜共晶Mg-Ni合金とニッケル添加量を増加させた過共晶Mg-Ni合金を作成し、ニッケル含有量および微細組織と水素化特性の変化を調べることを目的とした。 純Mgおよび純Niを鋼鉄製密閉ルツボを用いて溶解し、亜共晶Mg-Ni合金(Mg-14.8mass%Ni)および3種類の過共晶Mg-Ni合金(Mg-31mass%Ni, Mg-41mass%Ni, Mg-50mass%Ni)を作製した。やすりで切削してこの合金の粉末を作成した。試料の結晶構造をX線回折法を用いて調べるとともに、SEM観察により微細組織を調べた。これらの試料粉末は自動 PCT測定装置を用いて水素吸収速度を300℃にて測定し、水素吸収特性におよぼす微細組織およびニッケル濃度の影響を調べた。 亜共晶Mg-Ni合金は初晶Mg相と共晶Mg-Mg2Ni相の混合組織となり、過共晶Mg-Ni合金は初晶Mg2Ni相と共晶Mg-Mg2Ni相の混合組織となる。亜共晶合金の微細組織は試料作製時の冷却速度により異なる。このSEM観察結果をFig.1に示す。水冷した試料では初晶と共晶の両組織とも微細であるが、炉冷により冷却速度を遅くした試料では初晶Mg相が粗大となり、共晶相も成長している。さらに冷却速度を遅くすると初晶Mg相は大きいままであるが、共晶相中のMg2Ni相が球状化した。これらの熱処理を施した試料の水素吸収量の時間依存性を調べた結果を Fig.2 に示す。 水素化測定の1stサイクルにおいて、水冷材はほとんど水素を吸収しないが、冷却速度を遅くするにつれて水素の吸収は速くなることがわかる。水素化測定の5thサイクルでは、いずれの試料とも5分以内で初期水素化はほぼ終了するが、その後も徐々に水素を吸収し続ける。また、これらの試料は同じニッケル含有量であるにもかかわらず水素吸収量は熱処理に依存し、材料組織が小さい場合は水素吸収量が少なく、粗大な材料組織の試料ほど吸収量が多いことがわかった。最大水素吸収量は、冷却速度の最も遅い試料で4.8mass%の値が得られた。これは期待した値よりも少なく、この原因として水素吸収速度が遅く水素化が十分に行われていないためと考えられた。そこで、水素製造・貯蔵技術の開発グループ軽量水素吸蔵合金の開発室蘭工業大学 大学院 教授 斎藤 英之1. 研究の目的2. 研究実施方法3. 研究成果Fig.1 SEM micrographs of the Mg-14.8mass%Ni alloy specimen treated with water-quenched, furnace-cooled and more slowly furnace cooled specimens.

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