平成21年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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■教育研究部会 活動報告 研究小委員会水素タンクの水素脆性に関する研究室蘭工業大学 大学院 准教授 駒崎 慎一地域連携部会 活動報告連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告43 これまでの水素タンク用アルミニウム合金の水素脆性研究から、腐食反応によって発生した水素はその大部分が腐食ピット近傍に存在し、機械的特性の変化に及ぼすピットの影響を分離するため研磨によってピットを除去しようとすると多くの水素が一緒に取り除かれてしまうことを明らかにしている。すなわち、アルミニウム合金の機械的特性に及ぼす水素のみの影響を未だ抽出できていないのが現状である。 水素をすべて逃散させたにも関わらず試料表面を湿式研磨に供すると水素が再び吸蔵されることをはじめて見出したため、平成21年度はこの現象を利用したアルミニウム合金の水素脆性感受性評価に関する基礎的検討を行った。具体的には、種々の粒度の湿式研磨紙を用い表面の最終仕上げ状態の異なる試料を作製し、それら試料の水素放出特性を昇温脱離分析によって調査するとともに、水素吸蔵に伴う機械的特性の変化をスモールパンチ試験によって計測した。なお、スモールパンチ試験を採用したのは、試験片の厚さが0.50mmと薄く、表面性状の影響が機械的特性に大きく反映される試験法のためである。 供試材として、高力系アルミニウム合金7075BE-T651を用いた。試験片は平板材を押し出し方向と平行に切り出した後、湿式研磨により所定の寸法(10×10×0.50mm)に仕上げた。その際、最終の試料表面を#60、#120、#220、#800、#4000、コロイダルシリカ仕上げとして、結果的に水素吸蔵量の異なる試料を作製した。 水素放出特性測定のための昇温脱離分析は、昇温加熱機構付きガスクロマトグラフを用いて行い、温度範囲:室温~450℃、昇温速度:100℃/hにて行った。また、水素脆化感受性試験として実施したスモールパンチ試験は、インスロン型万能材料試験機を用い、雰囲気:大気、変位速度:0.20mm/minにて実施した。 最終表面仕上げ状態の異なる6種類の試料で計測された平均表面粗さと水素吸蔵量との関係を図1に示す。研磨紙の番号が小さく表面仕上げが粗くなるほど水素量が増加し、両者の間には良好な相関関係が認められる。もっとも、#4000仕上げとコロイダルシリカ仕上げの試料には表面粗さの違いはなかったが、コロイダルシリカ仕上げ試料の水素量は#4000仕上げのそれのおよそ半分であった。湿式研磨によって水素が添加され、表面仕上げが粗いほど水素量が多くなる原因については、現時点では明確になっていない。アルミニウムと水の反応(腐食反応)によって水素が発生し、それら水素が表面近傍の加工変質1. はじめに2. 供試材および試験方法3. 結果および考察図1 平均表面粗さと水素吸蔵量との関係図2 最大荷重時の変位と水素量の関係

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