平成21年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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地域連携部会 活動報告連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告47ている。そこで本プロジェクトにおいても有望な電解質材料系としてLSGM系電解質を用いている。しかし他方、LaGaO3系固体電解質には、セルを構成する際に用いられる酸化物電極材料と反応しやすい欠点が報告されており、適用に際してはアノード及びカソード材料と固体電解質との間に、反応を抑制する緩衝として中間層(図6に記載)を薄く挿入する必要性が指摘されている。このようなセル構成にはプロセスの複雑化が伴うため、より簡便なセルの作製法が求められている。 このようなセル作製法の一つとして電気泳動堆積(electrophoretic deposition:EPD)法を現在検討している。このEPD法は、帯電粒子の電気泳動現象と凝集堆積現象に基づくセラミックス成形法で、電圧や通電時間の制御で膜厚の制御された粒子堆積層を容易に形成できる特長があり、これをSOFCのセル作製に用いることで、アノード上に膜厚の制御された均一な電解質層や中間層の形成が期待でき、セル作製プロセスの簡略化が期待できる。この方法を用いて単セルの作製を試みた。得られたセルの走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察画像を図7に示す。緩衝中間層の効果を見るために、中間層を挿入しなかったセル、空気極側に中間層を形成させたセル、空気極側と燃料極の両方に中間層を挿入したセルについて、燃料にH2、酸化剤に空気を用いて電池特性評価としてI-V曲線を測定した。その結果、I-V特性は、中間層を挿入しないものでは500℃~800℃の温度範囲で測定されず、中間層を挿入したセルにおいては、I-V特性を測定することができた。特に、空気極側へGDC中間層を入れることにより安定した起電力の測定が可能となり、燃料極側にも中間層を入れることで出力の向上が認められた。ただ現状のセルでは、図2のSEM観察からも明らかなように燃料極が緻密であることから、目標としている出力は得られていない。今回のセルは、図2に示す積層体までをEPD法で形成後乾燥し、大気中1400℃で2時間焼成した後に空気極であるSm0.5Sr0.5CoO3 (SSC)をスクリーンプリント法により塗布し、800℃10分の焼成を行なって単セルの構築した。このため、1400℃の焼成に際し、中間層と電解質間での反応が生じ、高抵抗相のSrLaGa3O7相の形成が示唆され、出力の低下が生じていると考えられた。一方、燃料極の気孔率の改良とあわせて特性の改善を進めて行くことが今後の課題である。2.3 新規燃料極材料の開発 従来SOFCの燃料極としてはNiとイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の混合材料が知られているが、Niは炭化水素を燃料とすると、炭素の析出により活性点である燃料極/電解質/気相の三相界面を塞ぐことによるセル性能の低下が問題となっている。そこで炭素の析出によるセル性能の低下が問題とならないFeが研究された2,3)が、Feは多種の酸化状態をとることにより形態が変化し、劣化することが問題となっている。そこで本プロジェクトでは、Feに代わ図6 板状型セル構成の模式図図7 電気泳動法により作製された板状型薄膜

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