平成21年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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地域連携部会 活動報告連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告60表されている代表的なヒトの光学特性値(吸収係数、散乱係数、非等方性散乱パラメーター、屈折率)と厚み値を利用した光伝搬計算を行った。この計算では反射光に基づく反射率と透過光に基づく透過率を計算できる。 入射した光子がどのくらいの深さまで到達できるかを調べるため、組織の深さ方向グリッド0.005mmごとに380~900nmの各波長で吸収率を算出した。シミュレーションをする際、通常はヒト皮膚の皮下組織は文献値から6mmであるが、図13に示すように、610nm以降で光が透過成分を有することが分かり、光がさらに侵達していることになる。そこで、皮下組織の厚さを文献値の10倍の60mmとした。光は生体組織中を伝搬する際に、赤血球や細胞などの散乱・吸収粒子への衝突を繰り返すことで減衰していく。そのためグリッドごとに吸収率を計算したときに、皮膚組織の深いところでは0% になる。この性質を利用することで入射光の侵達度を調べた。その結果を図14に示す。短波長域では1~10mmの範囲に分布しているが、580~690nmの中波長域で50mmへ遷移していき、長波長域では50mmから大きな変化は見られない。これは主にヘモグロビンのモル吸光係数スペクトルに由来している。短波長域よりも長波長域の方が侵達度は深く、入射光は最大で50mm程度まで侵達する。生体埋め込み型センサーに用いるフォトセルのピーク感度波長を評価した上で、電力供給用レーザー光源の最適波長を760-780nmに仮定すると、十分な侵達が得られることが分かった。 レーザー光を生体組織に照射した際に観測されるスペックル現象を利用した経皮的生体組織血流イメージング装置の開発に関する研究では、レーザー散乱現象としてスペックル変動を利用した血流情報検出のための安定した測定光学系とコンピュータ画像解析装置の構成が出来上がった。さらに2回の動物実験を行い、基本的な血流イメージング動作確認を行うとともに、実測上の問題点、コンピュータ解析上の不具合など問題点を抽出した。平成22年度には室蘭工大側でより操作しやすい光ファイバー照明型システム、ならびに干渉フィルター組み込み型撮像光学系を新たに開発することで、利便性を向上させたシステムを構築したい。さらに東京都市大側での動物実験を行い、成果に結びつくデータの取得を目指す。 光が生体組織内をどこまでどのようにエネルギーとして伝わるかという基本的特性の解明については、皮膚組織のモデルをよりリアルな条件に設定した上で計算解析をすすめることや、室蘭工大側で開発中の2次元生体光伝搬シミュレーションを東京都市大学側の設計条件に合わせて実施し、さらに3次元シミュレーション開発を試みる。その成果を東京都市大学における動物実験により実施し、評価を行うとともに最適設計条件を見出す予定を計画中である。図14 皮膚組織内の光の侵達度スペクトル5. 終わりに図13 皮膚組織内の光の透過率スペクトル図12 光伝搬モンテカルロシミュレーションの概要

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