平成21年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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地域連携部会 活動報告連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告62Cl.3相当の組成のA508相当鋼、およびSi添加量を段階に減少させた低Si添加A508鋼の50kg実験室VIM溶解鋼を製造した。鍛造条件、熱処理条件は可能な限り現実に製造されている大型鍛鋼部材に近づけるものとし、本年度は表1および表2に示す成分を目標として試験溶解材である50kgVIM試験鋼塊各1本を溶製した。溶製された鋼塊は熱間鍛造により板材形状とした後、熱処理を実施して試験用板材とされた。寸法・形状を図1に示す。2.2 A508鋼Cl.3の特性評価2.2.1 シャルピー衝撃試験 母材の特性を十分に評価・解析することは照射研究の精度に非常に重要であり、圧力容器鋼に使用されている現行材料であるA508鋼Cl.3の機械特性評価、微細組織評価を行なった。シャルピー衝撃試験から得られた試験温度と吸収エネルギーの結果を図2に示す。JIS Z 2202 4号試験片(Vノッチ)を採取し、80℃、20℃、0℃、-20℃、-40℃、-75℃にてシャルピー衝撃試験を行ない、その結果延性脆性繊維温度(DBTT)はおよそ-20℃であった。2.2.2 破面のSEM観察 図3にシャルピー衝撃試験後の破面のSEM観察結果を示す。高温においては粒内・粒界の両方のディンプル破面が観察される。延性-脆性遷移温度域に入る0℃以下の試験温度では粒界ディンプル破面と粒内のへき開破面の混合となり、試験温度の低下にしたがって粒界ディンプル破面領域の面積が減少しているのが認められる。脆性領域になる-40℃において試験した試料では粒界ディンプル破面もほとんど観察されず、破面全域がほぼへき開破面となる。2.3 A508鋼のイオン照射効果2.3.1 イオン照射実験 照射効果評価は加速器を用いたイオン照射実験とSP試験により実施した。照射用試験片・SP試験片は表面の平滑度が重要であるために1000番まで機械研磨を実施した後、バフ研磨、電解研磨で仕上げを行なった。イオン照射実験は東京大学重照射施設(HIT)の1MVタンデム加速器を用いて4MeVのNiイオンで実施した。照射温度は室温とし、照射量はTRIMコードでの照射損傷計算に基づいて30dpaまで実施した。dpaとは照射はじき出し損傷率で、個々の格子原子が弾き出される回数(displacement per atom)である。2.3.2イオン照射材のTEM観察 イオン照射後の試料はFIB装置で薄膜化した後、透過電子顕微鏡による観察を行なった。図4は10dpa照射したイオン照射後試料の断面TEM像である。イオンビームは右手上方の矢印の方向から入射して、試料内におよそ1.8μm進入して停止する。視野の右上半分が照射領域とな図1 50kg実験室VIM溶解により製作されたA508相当鋼の寸法・形状

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