平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
103/350

ション法を活用し、組織への光の侵達深さと吸収量の特性を計算した。図18は光伝搬モンテカルロシミュレーションの概要と生体層状組織モデルを示したものである。生体組織における光伝搬の解析の場合、皮膚組織原点から組織内部に向かって光を重み1の光子として順次入射させ、与えられた組織の光学パラメーターと厚さに対して、乱数に基づく光の伝搬距離と方向を計算により求め、光子の挙動を推計学的に計算する。この時、光の波動的性質、偏光、蛍光は考慮していない。今回は、生体埋め込み型センサーが皮膚表皮下に設置されることを前提に、皮膚組織を層状構造と仮定し、文献に公表されている代表的なヒトの光学特性値(吸収係数、散乱係数、非等方性散乱パラメーター、屈折率)と厚み値を利用した光伝搬計算を行った。この計算では反射光に基づく反射率と透過光に基づく透過率を計算できる。 入射した光子がどのくらいの深さまで到達できるかを調べるため、組織の深さ方向グリッド0.005mmごとに380~900nmの各波長で吸収率を算出した。シミュレーションをする際、通常はヒト皮膚の皮下組織は文献値から6mmであるが、図19示すように、610nm以降で光が透過成分を有することが分かり、光がさらに侵達していることになる。そこで、皮下組織の厚さを文献値の10倍の60mmとした。光は生体組織中を伝搬する際に、赤血球や細胞などの散乱・吸収粒子への衝突を繰り返すことで減衰していく。そのためグリッドごとに吸収率を計算したときに、皮膚組織の深いところでは0%になる。この性質を利用することで入射光の侵達度を調べた。その結果を図20に示す。 短波長域では1~10mmの範囲に分布しているが、580~690nmの中波長域で50mmへ遷移していき、長波長域では50mmから大きな変化は見られない。これは主にヘモグロビンのモル吸光係数スペクトルに由来している。短波長域よりも長波長域の方が侵達度は深く、入射光は最大で50mm程度まで侵達する。生体埋め込み型センサーに用いるフォトセルのピーク感度波長を評価した上で、電力図18 光伝搬モンテカルロシミュレーションの概要図19 皮膚組織内の光の透過率スペクトル図20 皮膚組織内の光の侵達度スペクトル連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会101

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です