平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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供給用レーザー光源の最適波長を760-780nmに仮定すると、十分な侵達が得られることが分かった。 以上の結果に基づいて検討を進めた結果、光が組織へ侵達する過程で、どの深さにおいてどの程度のエネルギーが残存するかという実利用の際に重要なデータを新たに解析する手法を次に開発した。図21は皮膚組織を9層構造にモデル化した上で光伝搬モンテカルロシミュレーションを行い、波長400~900nmの範囲で縦軸に深さを、その際の残存エネルギー(%)を擬似カラーで示した結果の一例である。左側のダイヤグラムはモデル化した9層皮膚構造を示しており、各層の厚みは文献に基づく代表値を用いている。 今回は、光子が生体組織入射時に持つエネルギーを基準(100%)としたとき、ある深さに侵達した光子に残存するエネルギーの割合を解析した。本報告では正常なヒト皮膚の場合を例示しているが、各種皮膚疾患などへの医療応用では、光の散乱や吸収の度合いが変性していると予想されるが、それらに対してもパラメーターに種々の数値を与えた場合の例を幾つか試みている。グラフ中に描写した実線は等侵達率線であり、上から順に80%、50%、20%、10%、2% を表している。このグラフより、単位エネルギーを持ってヒト皮膚に入射した光子は1.0mm(角層~真皮最下層)程度の深さに侵達する過程でエネルギーの多くが吸収されて急激に侵達率50%以下まで減衰することがわかる。また、600nm付近を境に侵達率の低下が緩慢になることがわかる。これより、700~900nmあたりの可視~近赤外光が比較的深くまで侵達するという良く知られる知見も定量的に確認することができる。この結果は、生体埋め込み型センサーに用いるフォトセルのピーク感度波長として、電力供給用レーザー光源の最適波長を760-780nmに選定することの妥当性を検証することができた。さらに、この解析により、最適波長だけでなく、生体埋め込み電極の埋め込み深さ位置における光到達エネルギーを定量的に算定することが新たに可能になったことで、今後の埋め込みセンサー開発の研究進展にすぐに活用できる点で有用である。 レーザー光を生体組織に照射した際に観測されるスペックル現象を利用した経皮的生体組織血流イメージング装置の開発に関する研究では、レーザー散乱現象としてスペックル変動を利用した血流情報検出のための安定した測定光学系とコンピュータ画像解析装置の構成が出来上がった。さらに測定光学系の改良、解析手法の新規提案を行った上で動物実験を行い、基本的な血流イメージング動作確認を行うとともに、実測上の問題点、コンピュータ解析上の不具合など問題点を抽出した。平成23年度以降は今年度着手できなかった光ファイバー照明型システムの構築と、大幅な血流低下時の酸化血液濃度解析に対する新たな理論構築を行う予定である。 光が生体組織内をどこまでどのようにエネルギーとして伝わるかという基本的特性の解明については、任意の深さにおけるエネルギー残存率を擬似カラー表示できる新たな計算手法を開発した。今後は室蘭工大側で開発した2次元生体光伝搬シミュレーションを東京都市大学側の設計条件に合わせて実施し、さらに3次元シミュレーション開発を試み、可視化の性能を向上させる予定である。その成果を東京都市大学における動物実験により実施し、評価を行うとともに最適設計条件を見出す予定である。図21 皮膚組織深さに対する光侵達とエネルギー残存率終わりに5連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会102

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