平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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に示す成分を目標として試験溶解材である50kgVIM試験鋼塊各1本を溶製した。溶製された鋼塊は熱間鍛造により板材形状とした後、熱処理を実施して試験用板材とされた。寸法・形状を図1に示す。2.2 A508鋼Cl.3の特性評価2.2.1 シャルピー衝撃試験 母材の特性を十分に評価・解析することは照射研究の精度に非常に重要であり、圧力容器鋼に使用されている現行材料であるA508鋼Cl.3の機械特性評価、微細組織評価を行なった。シャルピー衝撃試験から得られた試験温度と吸収エネルギーの結果を図2に示す。JIS Z 2202 4号試験片(Vノッチ)を採取し、80℃、20℃、0℃、-20℃、-40℃、-75℃にてシャルピー衝撃試験を行ない、その結果延性脆性繊維温度(DBTT)はおよそ-20℃であった。2.2.2 破面のSEM観察 図3にシャルピー衝撃試験後の破面のSEM観察結果を示す。高温においては粒内・粒界の両方のディンプル破面が観察される。延性-脆性遷移温度域に入る0℃以下の試験温度では粒界ディンプル破面と粒内のへき開破面の混合となり、試験温度の低下にしたがって粒界ディンプル破面領域の面積が減少しているのが認められる。脆性領域になる-40℃において試験した試料では粒界ディンプル破面もほとんど観察されず、破面全域がほぼへき開破面となる。2.3 低Si添加A508鋼の機械特性評価2.3.1 引張特性評価 真空溶解炉で製造し鍛造後の板材から基本的な強度特性を取得するために、A508相当鋼、低Si添加鋼について引張試験を実施した。試験片形状はJIS規格 14A号試験片とし、鍛造方向から直角な方向に引張試験片の軸が向く方向で板材から切り出した。インストロン万能試験機を用いて、室温、ひずみ速度2.8×10-4s-1で実施した。その応力-ひずみ線図を図4に示す。数値的には低Si添加鋼がA508相当鋼よりも強度が高く伸びが少ないといえるが、差は5%以下で誤差の範囲と考えられ、低Si添加鋼、A508相当鋼とも同等の特性を持つと判断される。2.3.2 シャルピー衝撃試験 昨年度製作した素材の靭性評価を行うために、A508相当鋼、低Si添加鋼からJIS Z 2202 4号標準試験片(Vノッチ)およびハーフサイズ試験片を製作しシャルピー衝撃試験片を実施した。試験片形状を図5に示す。フルサイズシャルピー試験ではA508鋼C.L3とA508相当鋼でほぼ同じDBTTカーブが得られる。A508鋼は靭性が高く、延性領域の上部棚エネルギーにハンマーストップの影響がていると見られるのでハーフサイズ試験片で比較を行った。図6にハーフサイズ試験片のシャルピー衝撃試験結果を示すが、上部棚エネルギーは低Si添加鋼、およびA508相当鋼でほぼ同じ値を示し、またエネルギー遷移温度、破面遷移図2 A508鋼Cl.3のシャルピー衝撃試験結果図3 A508鋼Cl.3のシャルピー衝撃試験後の破面のSEM観察結果連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会104

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