平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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温度でも両方で大きな差は見られなかった。2.4 A508鋼のイオン照射効果2.4.1 イオン照射実験 照射効果評価は加速器を用いたイオン照射実験とSP試験により実施した。照射用試験片・SP試験片は表面の平滑度が重要であるために1000番まで機械研磨を実施した後、バフ研磨、電解研磨で仕上げを行なった。イオン照射実験は東京大学重照射施設(HIT)の1MVタンデム加速器を用いて4MeVのNiイオンで実施した。照射温度は室温とし、照射量はTRIMコードでの照射損傷計算に基づいて30dpaまで実施した。dpaとは照射はじき出し損傷率で、個々の格子原子が弾き出される回数(displacement per atom)である。2.4.2 イオン照射材のTEM観察 イオン照射後の試料はFIB装置で薄膜化した後、透過電子顕微鏡による観察を行なった。図7は低Si相当鋼の10dpa照射したイオン照射後試料の断面TEM像である。撮影条件はZ≈[011]、g=<01-1>であり、イオンビームは上方から侵入して右手上方の矢印の方向から入射して、試料内におよそ1.8μmまでの領域に照射損傷を与える。損傷領域には転位のコントラストが観察される。より深い部分はイオンビームによる損傷を受けていない非照射領域となっている。2.4.3 イオン照射材のSP試験による評価技術 イオン照射材のSP試験による評価技術の開発のために、A508鋼Cl.3材を用いて、イオン照射後の試料および非照射のSP試験を実施した。その荷重‐変位曲線を図8に示す。イオン照射材は15dpaおよび30dpaのものを用いた。SP試験において試験片厚さは精密な研磨によって0.25mmに統一される。イオン照射領域は表面近傍1.8μmの深さまでであるため、イオン照射面を下側にしてSP試験を実施した。試験温度は室温であり、変位速度は0.2mm/mmである。照射領域が極めて薄いために、SP試験の荷重変位曲線全体に大きな差は出ない。図8上で円で示した、弾性領域から塑性領域への遷移点付近に注目すると、非照射材に比べてイオン照射材は遷移点が明瞭ではなく、かつ高荷重であることが認められる。これは照射欠陥の導入による照射硬化の影響の可能性が考えられる。また矢印で示した最大荷重では、非照射材に比べてイオン照射材の最大荷重は高く、かつて低変位側で生じている。最大荷重においてクラックが生じると考えられるが、照射による延び減少の影響と考えられる。30dpaよりも15dpaのほうが照射による変化が大きく、これは損傷速度が低かったことによりビームヒーティング量も小さく、照射時の表面温度がやや低かった可能性が考えられる。図5 シャルピー衝撃片形状 (a)フルサイズ試験片 (b)ハーフサイズ試験片図4 低Si添加鋼およびA508相当鋼の引張試験の応力-ひずみ線図連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会105

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