平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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固体高分子形燃料電池PEFCは、現在家庭用定置式用などで商品化が開始されているなど、着々と実用化が進められているが、このような状態にもかかわらずコスト低減や耐久性向上をはじめに依然として数多くの解決が必要な技術的な課題が残されている。このような課題の一つが、作動温度の中温化である。PEFCの作動温度は、現在主に用いられているパーフルオロスルフォン酸系電解質膜では、電解質膜の耐久性や水分管理の観点から70℃から80℃程度であり、より高温度で作動する電解質膜の開発が期待されている。作動温度を高めることによるシステムの簡略化やコスト低減、作動に必要な水の管理の簡略化と用いる水管理に起因する耐久性の向上などが狙いである。 一方、もう一つの大きな課題が高コストの一因となっている白金使用量の低減である。燃料電池の電極が使用する白金は、現在用いられているパーフルオロスルフォン酸系電解質膜を中心としたシステムでは、DOE(米国エネルギー省)が自動車用として2015年の開発目標値として設定している0.2g/kWが仮に達成されたとしても、乗用車1台あたり20グラム前後の白金を使用することになり、世界の自動車生産台数を考えると資源の量としても大きな制約があり、かつ使用量が増加することによる投機対象資源としても注目され、価格の増加や変動の一因ともなりうることから、定置用燃料電池システムにおいてもその影響を強く受けることになる。このような背景のもとで、戦略的大学連携支援事業における研究活動の一環として、初年度からPEFCの作動温度を高める要素材料の開発とシステム化、および白金を使用しないかあるいは使用料を軽減する電極触媒の開発課題を設定し研究に取り組んでおり、平成22年度の活動で以下に示す成果と進捗を示した。 2.1 まえがき本研究では、2006年にプロトン伝導性が報告されたリン酸処理石膏1)をプロトン伝導体とした電解質膜の研究を行っている。石膏は硫酸カルシウムの半水和物(CaSO4・0.5H2O)で水と反応することで2水和物(CaSO4・2H2O)となり固化することから、建材や工作用途などに広く使われている。石膏自体にはプロトン伝導性は無いが、石膏をリン酸水溶液で硬化させたリン酸処理石膏は無加湿条件下で室温から300℃までの広い温度範囲において高いプロトン伝導性を示している2)。図1 リン酸処理石膏複合膜の平板状試料図2 交流インピダンス法により計測した試作電解質のイオン電導率定置用燃料電池の要素技術課題解決(第3ステップ)東京都市大学 工学部 特任教授 高木 靖雄/教授 永井 正幸/教授 小林 光一■ 教育研究部会 活動報告 研究小委員会技術開発のスコープ1リン酸処理石膏をプロトン伝導体とする中温動作電解質膜の研究2連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会184

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