平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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3.1 まえがき現在、固体高分子形燃料電池における水素燃料の供給方法として、ガソリンやメタノール、天然ガスなどを改質する方法が用いられている。しかし、この方法は改質ガス中微量に含まれるCOによる被毒の問題を抱えている。また、直接メタノール型では改質器を省略してより小型化が実現できるが、メタノール酸化の反応プロセスは複雑であり、中間体として生成するCO被毒種により同様の現象が生じる。この問題はPt-Ru合金触媒の開発によって大きな飛躍を遂げ、実用化に向け前進した3)。しかし、RuはPt同様に希少で高価なため、より安価な代替材料が求められている。加えて、CO濃度を100ppm以下に低減する必要があるためCO耐性をもつ高活性触媒の開発が必要とされている。これまで、卑金属を用いたCO被毒耐性のある白金合金触媒や酸化物の利用など様々な研究が行われてきた。その中でも安価で比較的構造が簡単な有機金属錯体を用いた作製法が報告されている4-5)。このような状況の中で、耐CO被毒性を持ち、かつ白金使用量を低減した白金合金触媒の開発は燃料電池等の実用化のために必要不可欠である。そこで本研究では白金低減の一環として有機金属錯体であるFeおよびNiのsalen錯体を用いて白金合金アノード触媒を作製し、その性能向上効果およびCO耐性を調べることを目的とする。3.2 実験方法3.2.1 試料の調製カーボンブラック(VulcanXC-72R)に0.1MのH2PtCl6と超純水900mlを加え、30min撹拌した後さらに30min超音波分散を行った。次に加熱撹拌を行いながらNaBH4を加え、さらに撹拌することでPtを還元した。これを吸引ろ過、水洗浄を行い80℃で乾燥させ粉末状にすることにより10wt%のPt/Cを作製した。これに金属mol比3:1になるように有機金属錯体を混合し、80℃で1h乾燥させた後、窒素雰囲気下で600℃、2時間焼成をすることにより触媒試料を得た。3.2.2 試料の評価作製した試料の結晶構造を粉末X線回折(XRD)により評価した。また、サイクリックボルタンメトリー(CV)法により触媒の耐CO被毒性およびメタノール酸化活性を評価した。CV測定では試料とナフィオン溶液の混合溶液をグラッシーカーボン電極に塗布して作用極を作製した。電解液としては、COストリッピングで0.1MH2SO4を、メタノール酸化測定では0.1MH2SO4+0.1Mメタノール混合溶液を用いた。また、透過型電子顕微鏡(TEM)およびエネルギー分散型X線分光法(EDS)により触媒表面状態および組成を評価し、X線光電子分光法(XPS)により表面電子状態を評価した。3.3 結果および考察測定した各触媒のXRDパターンを図5に示す。10wt% Pt/CではPtのピークが観測されたことにより、Ptが還元されたことが確認できる。また25°付近のピークはカーボンブラックからのC(002)に帰属され、すべての触媒に共通して現れた。また、Pt/Cに対してPt/C-Fe(salen)やPt/C-Ni(salen)ではPtのピークがやや高角度側へシフトするとともにブロードになることが確認できる。これより、Pt/C-Fe(salen)、Pt/C-Ni(salen)ではFeやNiがPtと固溶体となって複合体を形成しており、Ptの結晶構造に影響を与えていることが予想される。図6および図7にCOストリッピングボルタモグラムとメタノール酸化ボルタモグラムをそれぞれ示す。図6より、Pt/C-Fe(salen)とPt/C-Ni(salen)はともにPt/CよりもCO酸化開始電位がより低電位にシフトしていることから、活性が向上したことが確認できる。しかし、これらのピーク形状がそれぞれ異なるため、どちらのシフト量が大きいかの判断は難しい。一方、図7においてPt/Cのメタノール酸化開始電位が0.4V以上であるのに対し、Pt/C-Fe(salen)およびPt/C-Ni(salen)ではいずれも0.3~0.35Vで電流が立ち上がり、メタノール酸化活性の向上が認められた。有機金属錯体を用いたアノード用白金合金触媒の研究3連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会186

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