平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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Scheme 1 Synthesis of PBMA and CoTPP-amine -PBM complexScheme 2 Synthesis of picket-fence porphyrin燃料電池用酸素富化膜の開発室蘭工業大学 大学院 教授 松山 春男/助教 関 千草■ 教育研究部会 活動報告 研究小委員会研究の目的、概要等:燃料電池の動作効率を向上するために携帯型燃料電池に酸素を充分に供給することは重要であり、空気中の酸素を濃縮、供給できればより高出力の燃料電池の開発が可能となる。このとき医療・工業などの幅広い分野への応用が注目されている酸素富化膜を利用すると酸素濃縮だけではなく、空気中の不純物も除去でき、燃料電池の長寿命化も期待できる。これまでに酸素富化膜として芳香族アミン、メタクリレートポリマーとコバルトテトラポルフィリンとの錯体を利用した酸素富化膜の報告例もあるが、実用化に向けてはより流量が大きく、酸素濃縮能の高い富化膜が必要であり、薄膜作製法などの課題が残されている。そこで本研究では酸素親和性の高い有機金属錯体であるコバルトポルフィリン類を用いて酸素富化膜を作製し、その簡便な作製法の開発と酸素濃縮能の向上について検討を行った。研究実施の方法、経過等:ポルフィリンコバルト錯体のみを支持膜上に塗布すると、乾燥した時にもろく、はがれ落ちやすいため、ポリマーと混合して塗布した。用いたポリマーのポリブチルメタクリレート(PBM)はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を重合開始剤として窒素雰囲気下、トルエン中、90℃、24hの条件でブチルメタクリレートの反応を行うことにより合成した。PBMの収率は63%、重量平均分子量は2.7×104、分散比は1.6であった。 また、今年度は市販のテトラフェニルポルフィリン(CoTPP)よりもさらに酸素濃縮能が高いと推定される、かさ高い置換基をもつピケットフェンスポルフィリンを合成した。CoPFPの合成は、o-ニトロベンズアルデヒドとピロールを出発物として合成した(Scheme 2)。まず、酢酸溶中でo-ニトロベンズアルデヒドにピロールを滴下させ、その後、2時間、加熱還流することでmeso-テトラ(o-ニトロフェニル)ポルフィリン(NTPP)を合成した。次に、塩化スズと塩酸を用いて、65℃、25分でニトロ基をアミノ基に還元し、meso-テトラ(o-アミノフェニル)ポルフィリン(ATPP)を合成した。このとき、得られたATPPは4つのアトロプ異性体(α, β, α, β-、α, α, β, β-、α, α, α, β-、α, α, α, α-)の混合物であった。そこで、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離し、目的物であるα, α, α, α-ATPPのみを得た。しかし、単離したα, α, α, α-ATPPの収量が少なかったため、残った3つの異性体をトルエン溶媒中、8時間、加熱還流することで異性化させ、再び4つのアトロプ異性体を得た。同様に、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離した。得られたα, α, α, α-ATPPに、ピリジンを塩基として塩化ピバロイルと反応させ、室温、2時間でかさ高い置換基となるピバロイル基を導入し、meso-テトラ(α, α, α, α-o-ピバルアミドフェニル)ポルフィリン(α, α, α, α-PFP)を合成した。連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会191

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