平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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軽量水素吸蔵合金の開発室蘭工業大学 大学院 教授 斎藤 英之■ 教育研究部会 活動報告 研究小委員会マグネシウムは比重が1.74と小さく、7.6mass%もの水素を溶解して水素化物(MgH2)を作るため、軽量水素吸蔵合金の基合金として期待されている。しかしながら、水素との反応速度が遅く、また高温でのみ水素と反応するため、水素吸蔵温度の低下と表面反応速度の向上が求められている。マグネシウムにニッケルを添加しMg-Ni合金とすることは有効であることが知られているが、ニッケル添加量および微細組織と水素化特性との関係は調べられていなかったため、昨年度はニッケル添加量の比較的少ない亜共晶Mg-Ni合金とニッケル添加量を増加させた過共晶Mg-Ni合金を作製し、ニッケル含有量および微細組織と水素化特性の変化を調べた。この結果より、亜共晶マグネシウム合金では初晶マグネシウム相と共晶組織の両者とも粗大化した方が水素吸収速度が増加することを明らかにした。また、過共晶マグネシウム合金ではニッケル添加量が31%程度のものが水素吸蔵量が多く水素吸収速度の速い合金となり、これよりニッケル添加量を増加させるにつれて水素吸蔵量が減少することを明らかにした。本年度はニッケル添加量が31%の合金にマンガンを添加し、水素の放出温度を低下させることを試みた。この合金を作製し水素吸蔵特性の評価を行うとともに、タンクに充填して水素吸蔵合金タンクを作製し、水素燃料電池システムに接続して水素を供給することを目的とした。Mg-Ni過共晶合金にマンガンを添加した合金を作製し、試料の微細組織と水素吸蔵放出特性におよぼす添加元素および微細組織の影響を調べた。作成する試料の目標組成はMg-30.8mass%Ni-0.2mass%Mn合金であり、試料を溶製後、やすりで切削してこの合金の粉末を作成した。試料の結晶構造をX線回折法を用いて調べるとともに、SEM観察により微細組織を調べた。これらの試料粉末は、高速気流中衝撃法により球形化処理を施した後、自動PCT 測定装置を用いて水素吸収速度を測定するとともに、PCT特性を測定し最大水素吸蔵量および水素放出の平衡圧力を測定して作製された合金の水素吸蔵放出特性を評価した。また、この合金を粉砕した後、タンクに充填し、水素吸蔵合金タンクを作製した。図1に示すSEM写真より、作製したMg-30.8mass%Ni-0.2mass%Mn合金は初晶Mg2Ni相と共晶相からなることが分かった。この結果はX線回折測定からも確かめられた。組織写真より、初晶は比較的大きいが、共晶相はマンガン未添加のものより微細であることが分かる。この合金の塊をやすりにより切削し、合金粉末とした後、高速気流中衝撃法により合金粉末に衝撃力を与え、球形化処理を研究目的1研究実施方法2研究成果3図1 Mg-30.8%Ni-02%Mn合金のSEM組織写真連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会197

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