平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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誘導期はほとんど変化しなかった(図2)。これより、誘導期に対するAl量の影響は非常に小さいといえる。一方、反応8時間におけるH2生成速度を図3に示す。Al量が増加することによってH2生成速度は上昇することがわかった。したがって、H2生成速度はAl量により制御することが可能であると考えられる。反応により生成したH2を高圧で貯蔵する方法についても検討を行った。10gのAlおよび80mlのH2Oを用いて60℃で反応を行ったところ,反応時間8時間後には10.5MPaのH2を反応器内に貯蔵することができた。これより,本法は直接H2の製造および高圧貯蔵を可能にする新しいH2の製造法になると考えられる。3.2. 大型ステンレス製反応器を用いたAlとH2OからのH2生成反応反応器の容積を小型(100ml)から大型(2,000ml)に変更し、スケールアップについて検討した。図4に100gのAlおよび400mlの水を用い反応を行った結果を示す。実験条件は撹拌速度1,200rpmおよび小型反応器で誘導期の短かった反応温度60℃とした。これより、誘導期は非常に短く、これまでと同様の傾向で反応を行うことが可能であることが明らかとなった。さらに、H2生成量、誘導期およびH2生成速度に対する撹拌速度の影響について検討した。H2生成量と撹拌速度の関係を図5に示す。撹拌速度を増加させることで反応8時間後の水素生成量は増加することがわかった。この現象は以下のように説明できる。Alと水との反応により生成するAl(OH)3がAl表面を覆ってしまい、反応速度が低下する。しかし、撹拌速度が大きい場合は生成したAl(OH)3がAl粒子表面から剥がれ落ちることで、効率よく水素が生成することができると推測される。さらに、このときの誘導期を表1に示す。いずれの場合の誘導期も非常に短く、攪拌速度には依存しないことがわかった。この結果から、反応温度60℃では、撹拌によるAl表面の酸化被膜が破壊されてから起こる反応よりも、酸化被膜に存在する欠陥部分での反応が優先的に起こると考えられる。また、反応時間と水素生成速度の関係についてまとめた結果を図6に示す。これより、反応時間が短い場合(反応時間0.75および1.5h)では撹拌速度が速いと水素生成速度も大きくなることがわかった。それ以降は反応時間が経過するに従って水素生成速度は低下し、低い回転速度であるほど高い水素生成速度が得られる傾向がみられた。これは図5AlとH2Oとの反応のH2生成量(反応8時間後)に与える攪拌速度の影響(反応温度60℃)表1 AlとH2Oとの反応の誘導期に与える撹拌速度の影響(反応温度60℃)図4AlとH2Oとの反応によるH2生成(●) Al粉末(100g、H2O 300ml)、(▲) 廃Al(40g、H2O 1,400ml)図6AlとH2Oとの反応のH2生成速度(反応8時間後)に与える反応時間の影響(反応温度60℃)連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会200

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