平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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■ 重い電子系(Ce1-xLax)Ru2Si2の電気抵抗と磁性村山 茂幸■ スピネル型Cu(Ir1-xMx)2S4(M=Sn,Hf)の金属-絶縁体転移永田 正一、戎 修二(1)La2-x-yNdySrxCuO4の超電導とストライプ秩序に対するミリング効果銅酸化物高温超電導体は現在最も高い超電導転移温度を持つ系であり、その超電導発現メカニズムを完全に解明することは大変重要である。典型的な銅酸化物高温超電導体の一つであるLa系銅酸化物では、ホール濃度x=1/8付近で、電荷とスピンが縞上に秩序化し(ストライプ秩序)、そのため超電導が大きく抑制される。このストライプ秩序が揺らいだ状態は、超電導の発現メカニズムと関係しているとの指摘があり、超電導との関連を明らかにすることが重要である。本研究では、ストライプ秩序が発達する典型的な系であるLa2-x-yNdySrxCuO4(LNSCO)において、メカニカルミリングにより構造不規則性を導入し、超電導とストライプ秩序がどのように影響されるのかについて調べた。ストライプ秩序が静的に発達しない試料(x=0.175)とストライプ秩序が静的に発達する試料(x=0.13)において、メカニカルミリングを6~48時間まで段階的に行った。X線粉末回折実験では、ミリング時間の増加に応じて回折ピーク強度が減少し、その線幅が増大することが分かった。これはメカニカルミリングにより構造不規則性が導入され、結晶子径が減少し、歪みが入ったためと考えられる。図1、図2に回折プロファイルの解析から得られた格子定数のミリング依存性を示す。x=0.175ではミリング時間の増加とともにa軸が伸び、c軸が縮んでいることが分かる(図1)。これは構造不規則性の導入により結晶の斜方晶度が増していることを意味している。一方、x=0.13の試料ではa軸とc軸がともに減少しており、斜方晶度の増加は見られなかった(図2)。x=0.13では、興味深いことに、ミリング時間が24h、48hの試料で超電導転移温度Tcの上昇が見られた。これは超電導を抑制しているストライプ秩序の形成が構造不規則性の導入によって抑制されたためと考えられる。このように構造不規則性の導入でストライプ秩序が抑制されることは、これまで報告が無く、大変興味深い。今後、ストライプ秩序が発達し超電導が抑制されている他の試料系においても、構造不規則性の導入によりTcを上昇させることができるかどうかについて調べていくことが望まれる。(2)重い電子系(Ce1-xLax)Ru2Si2の電気抵抗と磁性重い電子系超電導体の一つであるCeRu2Si2は、中性子回折実験からCeサイトへの8%以上のLa置換によりa軸方向に不整合な波動ベクトルを持つsin波磁気構造が出現することが見出されている。さらに20%以上の置換ではsin波のsquaringが観測されている。本研究では、CeRu2Si2超電導体の電子物性を明らかにするため、関連物質である(Ce1-xLax)Ru2Si2の単結晶を作製し、電気抵抗測定、磁化測定から電気的性質および磁気的性質について系統的に調べた。(Ce1-xLax)Ru2Si2の単結晶試料はCzochralski法により作製し、800℃で一週間アニールを行った。磁化率はSQUID磁化測定器を使用し、温度範囲2~300K、印加磁場5000Oeで測定した。電気抵抗は3He cryostatを用い4端子交流法により温度範囲図1図2図3連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会207

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