平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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0.4~300Kで測定した。x=0.2の試料における電気抵抗の温度依存性を図3に示す。c軸平行方向の電気抵抗率では、5.5K付近で反強磁性に由来するカスプが確認された。このカプスからネール温度をTN=5.5Kとした。一方、c軸垂直方向の電気抵抗ではTNよりやや高温でブロードな極大が観測されたが、TN付近では大きな異常は観測されず、2K付近で折れ曲がりが観測された。この折れ曲がりは、sin波のsquaringが始まる温度とほぼ一致する。La濃度xを系統的に変えて同様な測定を行い、TNのx依存性を明らかにした。この研究により(Ce1-xLax)Ru2Si2系の特異な磁気相図が明らかとなった。(3)スピネル型硫化物Cu(Ir1-xMx)2S4(M=Sn, Hf)の金属-絶縁体転移 スピネル型硫化物CuIr2S4の電気抵抗率と磁化率の温度依存性を図4に示す。金属‐絶縁体(M-I)転移が226Kでおこる。この転移はIrの電荷配置が低温で秩序化して凍結することに起因する。本研究ではスピネル型のB-サイトに注目し、IrをSnおよびHfで置換したCu(Ir1-xMx)2S4(M=Sn,Hf)を合成した。SnとHfの置換が金属-絶縁体転移に及ぼす影響を磁性の面から調べることを目的とする。試料は固相反応法で合成を行い、低濃度領域に注目しSQUID磁束計で磁化率を測定した。CuIr2S4はT>226Kの領域で温度に依存しないパウリ常磁性を示し、T<226Kでは原子芯による弱い反磁性を示す。図5、6にCu(Ir1-xMx)2S4(M=Sn,Hf)の外部磁場H=1.0kOeでの磁化率(χ=M/H)の温度依存性を示す。M-I移転点はSn,Hf置換により低温側にシフトする。置換量x=0.10~0.20付近で磁化率のスッテプ状の変化が消失する。低温相の磁化率の値が負から正の向きに変化する傾向が見られる。T<50Kでの磁化率の増大は物質固有の性質とは考えていない。CuIr2S4の低温相ではB-サイトにおいてIr4+-Ir4+のspin-対(S=0)の形成により, 磁性は消失し同時に絶縁体になる。Ir4+-Ir4+対の片方のIr4+がSn4+,Hf4+で置換されるとspin-対は破壊される。対を形成するために対の原子間隔が縮んでいる。対の破壊によりこの縮みがなくなり元の間隔に戻る。この戻りにより、電子は結晶内で移動しやすくなり試料は金属的な磁性を回復する傾向をもつ。以上より、スピネル型硫化物の金属-絶縁体転移に対する元素置換効果のメカニズムが明らかとなった。今年度の超電導の研究プロジェクトでは、La系銅酸化物高温超電導体において、ディスオーダーを導入するとTcが上昇するという特異な振る舞いを見いだすことができた。今後、Tcが上昇した試料において東京都市大学で超電導材料としての評価ができるように、現在の粉末状試料をバルク化することが課題である。また、CeRu2Si2超電導体の関連物質やスピネル型硫化物では、特異な電気的性質および磁気的性質に対する元素置換の効果が明らかになった。これらの成果は、今後の新たな超電導体の開発につながるものであり、同様な性質を有する系で超電導の可能性を探ることが望まれる。図4CuIr2S4の金属-絶縁転移図5 Cu(Ir1-xSnx)2S4の磁化率の温度依存性図6 Cu(Ir1-xHfx)2S4の磁化率の温度依存性まとめ4連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会208

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