平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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を行い、高過給下においてもバックファイアをおこさない点火系の検討を行った。また点火ケーブルの耐久性不足に関しては、耐久性が保証されている市販の点火システムの組み合わせにより、従来のバックファイア対策ケーブルに代わるものの検討を行った。6─2 水素エンジン最高出力向上水素エンジンの最高出力向上のため、バス用水素エンジンを上回る高い過給圧を目指した。過給圧の向上により、点火栓はさらに放電が困難になり、高い放電電圧が必要とされるようになる。従来の対策ケーブルを使用した場合、放電電圧の増加に伴い、アース線に設けた抵抗も高くする必要がある。すなわち残存電圧の増加が予測される。従って対策ケーブルは、耐久性のみならずバックファイア防止の面からも改善される必要があることが分かる。そこでこの対策のため、構造上、電荷を蓄積しにくいC.D.I.(Capacitor Discharge Ignition)方式を採用した。このとき供試機関は日野自動車製N04C直噴4気筒ディーゼルエンジンを採用した。バス用水素エンジンと同様の変更を施し、実験に供試した。C.D.I.方式は従来のフルトランジスタ方式と比較して点火エネルギーが小さいため、失火の発生が課題となる。そのため放電時間の異なる点火コイルを用いて、点火システムの最適化を行った。図11に放電時間が不足であった点火コイルMP13の放電波形と、放電時間が最適であった点火コイルMP41の放電波形を示す。またそれぞれの点火コイルを使用した場合の最大過給圧を図12に示す。図より放電時間が不足していたMP13では失火により過給圧を上げることができないこと、MP41では過給圧を過給機の使用限度である150kPaまであげられることが分かった。図13にC.D.I.方式を採用した水素エンジンの出力特性をベースエンジンと比較して示す。最高出力はベースエンジンの約90%まで向上していることが分かる。この仕様では、点火系を市販の部品を組み合わせることで構成できるため、信頼性の向上もあわせて達成することができた。6─3 水素エンジン低速トルク向上水素エンジンの低速トルク向上のため、電気モータにより低速トルクをアシストするハイブリッド方式を採用した。図14にハイブリッドエンジンの構造を示す。エンジンのフライホイール部にコイルと永久磁石により構成されるモータ兼発電機が取り付けられている。これによりエンジン減速時には発電し、低速トルクが要求される場合にはモータによりエンジントルクをアシストするしくみである。なおこのハイブリッドシステムは、日野自動車株式会社製のものを流用し、水素エ図13 C.D.I.方式を採用した水素エンジンの出力特性図12 放電時間の最大過給圧に及ぼす影響連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会47

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