平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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本エンジンシステムの開発では、上で述べたエンジン本体と噴射弁の開発、EGR等によるNOxの低減技術開発に加えて、次の要素技術の開発を行った。(a)水素に適したNSR(NOx吸蔵還元)触媒と適用技術の開発(b)車両走行に適用可能なエンジン制御、エンジン本体からのNOx低減燃焼制御およびNSR触媒制御を行う制御システムの開発これらの開発技術をシステム化し、台上でJE05モード走行運転を行い、NOx排出レベルの評価を行った。この結果、EGR適合によりJE05モードエンジンアウトNOX平均排出量1.07g/kWhを達成した。さらに、NSR触媒とディーゼル酸化触媒の装着により、NOx排出量0.08g/kWhが得られ、触媒使用の妥当性が検証され、現行2009年規制値である0.7g/kWhを大幅に下回るポテンシャルを持つことが確認できた(表1)。 2.3 NOx排出を大幅に低減する新しい燃焼コンセプトの研究(平成21年度)CO2排出のない水素燃料エンジンの唯一の有害排気成分は窒素酸化物NOxであり、特に高負荷運転条件では、これまでの技術では数千ppmという高い排出濃度であった。本プロジェクトでは平成21年度の研究においてこのNOx排出を大幅に低減することのできる新しいコンセプトを見出し、PCC燃焼(過濃混合気塊点火燃焼コンセプト;Plume Ignition Combustion Concept)と命名し、学会での研究発表も行った。このコンセプトは、水素の空気に対する高い拡散性と燃焼速度を活用したものであり、噴射中または直後の高じょう乱状態の過濃水素噴流塊に火花点火し燃焼させ、過濃混合気の低NOx生成を活用したものである。図4に示すように、最大出力の85%近傍の高負荷運転領域で、上死点からそれ以降の噴射時期で、かつ概ね噴射期間に近い時期の火花点火により、NOxの生成が他の条件の70%以上もの大幅な低減が実現できた。さらに、熱効率ηiの低下も未燃焼水素の急増も生じていないことがPCC燃焼の特長である。また、PCC燃焼にEGRを行うことによって、さらに大幅なNOxの低減が可能であり、EGRにみにより現行規制値である2009年大型バスの規制値レベルである0.7g/kWhのレベルまで低減できる可能性も確認できた(図5)。表1 JE05モード走行による排気性能図4 PCC燃焼による低NOx排出特性図5 PCC燃焼による低NOx排出特性 図6 PCC燃焼の噴射中点火による一層のNOx排出低減効果連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会51

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