平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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さらなるNOx低減のポテンシャルを確認するため、噴射中の水素噴流に火花点火を行う研究を行った。図6に示すように、大幅なNOxの排出が実現でき、現時点で高負荷運転条件でかつ供給する水素のλが1.5近傍の希薄混合気条件にもかかわらず、80ppmという極めて低いNOx排出を実現することができた。これは、噴射中の水素噴流が空気を取り込んで希薄化する前の過濃混合気を点火燃焼させたことによる効果であり、NOxの低減効果は噴射された水素の噴射時期から点火までの時間に概ね対応する。ただし、図6左図に示すように、NOx低減効果に対応するように熱効率の低下が生じている。過濃混合気の燃焼によるローカルな酸素不足が原因であり、未燃焼水素の排出もNOx低減に対応して増加している。このよういなトレードオフの解決が本研究の課題であり、噴射弁から噴出される噴流形状の最適化で対応する計画である。3.1 研究の背景とコープ水素をはじめ種々の炭化水素燃料を使用可能な小型高出力SOFCシステム構築し、特に中温度領域(500℃から600℃)で動作可能な燃料電池システムに必要な知見を集積し、最適なシステムの設計・試作を行うことを目標としている。3.2 燃料極支持型セルの開発現在、右図に示すようなチューブ型セル〔(独)産総研と共同研究〕と板状型セル〔(独)物質・材料研究機構と共同研究)〕について燃料極支持型セルの研究を進めている。図8に板状型セルの模式図を示す。このようなセルに用いる固体電解質として、近年ペロブスカイト型構造を有する酸素イオン伝導体LaGaO3のA-site及びB-siteの一部をSr及びMgでそれぞれ置換したLaSrGaMgO系(LSGM)が注目されている。特に、この系の中でもLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2O3-δ(LSGM8282)は、最も高いイオン伝導性を有することから、固体酸化物型燃料電池(SOFC)の作動温度低温化に有効な電解質材料として期待されている。そこで本プロジェクトにおいても有望な電解質材料系としてLSGM系電解質を用いている。しかし他方、LaGaO3系固体電解質には、セルを構成する際に用いられる酸化物電極材料と反応しやすい欠点が報告されており、適用に際してはアノード及びカソード材料と固体電解質との間に、反応を抑制する緩衝として中間層(図7に記載)を薄く挿入する必要性が指摘されている。このようなセル構成にはプロセスの複雑化が伴うため、より簡便なセルの作製法が求められている。このようなセル作製法の一つとして電気泳動堆積(electrophoretic deposition:EPD)法を現在検討している。このEPD法は、帯電粒子の電気泳動現象と凝集堆積現象に基づくセラミックス成形法で、電圧や通電時間の制御で膜厚の制御された粒子堆積層を容易に形成できる特長があり、これをSOFCのセル作製に用いることで、アノード上に膜厚の制御された均一な電解質層や中間層の形成が期待でき、セル作製プロセスの簡略化が期待できる。この方法を用いて単セルの作製を試みた。得られた低温型固体酸化物形燃料電池(SOFC)用電極の開発(平成20-21年)3図8 電気泳動法により作製された板状型薄膜セルの断面SEM観察写真(空気極は未形成)図7 板状型セル構成の模式図連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会52

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