平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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セルの走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察画像を図8に示す。緩衝中間層の効果を見るために、中間層を挿入しなかったセル、空気極側に中間層を形成させたセル、空気極側と燃料極の両方に中間層を挿入したセルについて、燃料にH2、酸化剤に空気を用いて電池特性評価としてI-V曲線を測定した。その結果、I-V特性は、中間層を挿入しないものでは500℃~800℃の温度範囲で測定されず、中間層を挿入したセルにおいては、I-V特性を測定することができた。特に、空気極側へGDC中間層を入れることにより安定した起電力の測定が可能となり、燃料極側にも中間層を入れることで出力の向上が認められた。ただ現状のセルでは、図8のSEM観察からも明らかなように燃料極が緻密であることから、目標としている出力は得られていない。今回のセルは、図8に示す積層体までをEPD法で形成後乾燥し、大気中1400℃で2時間焼成した後に空気極であるSm0.5Sr0.5CoO3(SSC)をスクリーンプリント法により塗布し、800℃で10分の焼成を行なって単セルの構築した。このため、1,400℃の焼成に際し、中間層と電解質間での反応が生じ、高抵抗相のSrLaGa3O7相の形成が示唆され、出力の低下が生じていると考えられた。一方、燃料極の気孔率の改良とあわせて特性の改善を進めて行くことが今後の課題である。3.3 新規燃料極材料の開発従来SOFCの燃料極としてはNiとイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の混合材料が知られているが、Niは炭化水素を燃料とすると、炭素の析出により活性点である燃料極/電解質/気相の三相界面を塞ぐことによるセル性能の低下が問題となっている。そこで炭素の析出によるセル性能の低下が問題とならないFeが研究された2.3)が、Feは多種の酸化状態をとることにより形態が変化し、劣化することが問題となっている。そこで本プロジェクトでは、Feに代わり耐熱ステンレス鋼材料の適用を試みている。今年度は耐熱ステンレス鋼材料として、高温で炭化水素と水蒸気が共存する雰囲気での使用や、SOFCのインターコネクタ材料や自動車のマニホールド材料を参考にして選定したDIN1.4841(SUS310S相当)、SUS316L、SUS430L及び既存の材料であるNiを比較することでFe系燃料極材料の可能性を検討した。これらの耐熱鋼の成分を表2に示す。4.1 研究の背景とコープ安価に水素を製造する研究開発の一環として、鉄と水から水素を発生させる反応に着目し、反応条件と燃料電池への安定した水素供給方法を検討することを目的とする。また、水素を発生させるためにはCO2の使用が必要であることから、長期的にはCO2回収の可能性をも検討する。4.2 水素発生の基礎的な検討鉄粉を高温の水蒸気と反応させると水素が発生するが、この系に二酸化炭素を加えると反応速度は速くなり、室温でも反応することがわかった。二酸化炭素は炭酸鉄の固体として沈殿するため、二酸化炭素の回収・固定法として利用できる可能性もある。化学反応式は次のとおりである。Fe+H2O+CO2 →FeCO3+H2、 H=–69kJmol–1二酸化炭素雰囲気中で市販の鉄粉と水とを攪拌し、ガスクロマトグラフィーによって気相成分の時間変化を調べ、反応速度を求めた。鉄粉の粒径が小さいほど、また高温になるほど反応速度は速くなり、鉄の酸化反応が律速段廃鉄材料からの水素製造研究(平成20-21年度)4鋼種金属相成分CrNiSiNoCDIN1.4841オーステナイト(fcc)24.9120.492.38-0.111SUS316Lオーステナイト(fcc)16.4012.430.802.110.02SUS430Lフェライト(bcc)16.490.150.820.020.03表2 鋼種の金属相と成分(Feバランス)連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会53

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