平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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階であることがわかった。また時間とともに鉄表面には炭酸鉄の固体が析出し、これが反応の進行を阻害することがわかった。一方、ボールミルを用いて鉄粉を粉砕しながら反応させると、反応速度は大きくなり、二酸化炭素分圧に比例した。鉄の粉砕による新生面の露出や炭酸鉄の除去によって、鉄の比表面積および供給速度が増加し、相対的に二酸化炭素→炭酸生成過程が遅くなって、これが律速段階になったと考えられる。鉄の原料として鉄鋼を用いると、その組成によって反応速度は異なり、炭素鋼などで速かった。試験的に、金属加工メーカーより供給された研削スラッジ(油分や無機塩類なども含まれる)を原料としてそのまま用い、反応させたところ、純鉄を用いたときと同様に二酸化炭素の吸収と水素の発生が確認された。発生した水素を固体高分子型燃料電池に供給すると、時間とともに出力が低下する現象が観察された。反応系内に共存する物質や水素以外に副成した物質が、燃料電池を被毒する可能性が考えられた。4.3 炭酸水を用いたCO2吸収と水素発生の特性研究4.3.1 実験方法粒径3~5μmの純鉄(球形、純度99%以上、高純度化学研究所製)、粒径約150μmの製鋼用銑鉄(日本鉄鋼連盟JSS102-8、炭素含有率4.71%の炭素鋼)、ボールミルで粒径約15μmに粉砕した同銑鉄を試料として用いた。これらの鉄粉を各々10gをポリボトル(312.5ml)に入れ、真空ポンプでポリボトル内の空気を取り除いたあと容器に二酸化炭素を充填し1気圧の二酸化炭素雰囲気にした。バブリングし、50℃に温めた精製水25mlをボトルに加え振とう恒温機(2000rpm、50℃)で攪拌した。1時間ごとに容器内の気体を0.1ml採取し、ガスクロマトグラフによって分析した。4.3.2 水素生成量とCO2吸収量の特性このような実験システムにより水素の生成が確認でき、その生成量と二酸化炭素吸収量の時間変化は図9のようになる。粒径の最も小さい純鉄が水素生成量、CO2吸収量ともに最大となった。銑鉄では,当然のことであるが粉砕により粒径を微細化したほうが水素生成量、CO2吸収量ともに向上した.また粉砕前後の粒径変化を顕微鏡で観察し、反応による粒径の変化を確認できた。X線回折パターンを計測し求めた結晶子寸法、歪、格子定数から、銑鉄の表面の酸化被膜が反応の妨げになっている可能性があることが計測されている。また銑鉄に含まれる炭素は炭化鉄として存在し耐腐食性を有することから、これが反応の妨げになっていることなど、粒直が大きいこと以外に銑鉄の反応の低い理由が計測されている。 4.3.3 まとめ粒径が小さく表面積が大きいほど反応速度が速くなることが明らかになった。また、酸化皮膜や炭化鉄は反応の妨げになっているが示唆された。この研究グループで平成20年度と21年度に次世代技術として取り上げたこれらの研究課題は、平成22年度には課題解決テーマには含めなかった。しかしながら、SOFC電極材料は広く燃料電池用材料の研究という括りで、また廃鉄からの水素製造研究は、廃棄金属からの水素製造という観点からは室蘭工業大学で実施している廃アルミからの水素製造研究とは目的が同じである。このような理由から、連携プロジェクトが終了する平成23年度以降も、定期的な技術交流のミーティングを継続していく。水素エンジンの研究に関しても、次世代エネルギーである水素利用やNOxの低減技術など環境に影響を与える研究テーマであるため、学生に対する講義などの形で、交流を続けたい。次世代要素技術課題今後の課題5図9 水素生成量とCO2吸収量連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会54

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