平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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現在の地球が抱えている地球温暖化ガスCO2による地球温暖化軽減、大気環境汚染の軽減および化石系燃料の枯渇化対策のため、固体高分子形燃料電池(PEFC)が次世代のエネルギー変換システムとして、自動車用主動力源や家庭定置型発電用あるいは小型モバイル機器用電源として実用化が進められている。自動車用は本格的な実用化に向けて各界で開発に力が入れられており、全世界で技術開発と平行して商品化前に市場におけるデータや情報取得と水素製造・輸送・供給などのインフラ側と一体になって大規模な実証試験が行われており、わが国では、FCCJ(日本燃料電池実用化推進協議会)が2015年からの商品化を前提にしたシナリオに従い各種展開がされている。一方家庭定置用は、2009年5月から世界に先駆け家電メーカー・エネルギー会社から本格的な商品化が開始されている。しかしながら、これまでの技術の延長上にはないPEFCは、このような商品化を迎えている状態にもかかわらず、コスト低減や耐久性向上をはじめに依然として数多くの解決が必要な技術的な課題が残されている。このような課題の一つが、作動温度の中温化である。PEFCの作動温度は、現在主に用いられているパーフルオロスルフォン酸系電解質膜では、電解質膜の耐久性や水分管理の観点から70℃から80℃程度であり、より高温度で作動する電解質膜の開発が期待されている。その理由は、例えば自動車用燃料電池の場合、作動温度の高温化によりラジエーター面積の軽減によるシステムの小型化とこれに起因するコスト低減が期待できるためである。さらに電解質膜によっては無加湿作動が可能であるため、同様にシステムの簡略化と現在用いられているパーフルオロスルフォン酸系電解質膜の宿命である水管理の煩わしさと不適切な水管理による耐久性の低下を取り除くことのできる可能性も持っている。また、家庭定置用コジェネレーションシステムでは、排熱を利用したヒートポンプの活用や、生活用水の多様化や配管系の小型化などに繋がるため、燃料電池システムの中温作動化は同様に高い期待が寄せられている。一方、もう一つの大きな課題が、白金使用量の低減である。燃料電池の電極が使用する白金は、現在用いられているパーフルオロスルフォン酸系電解質膜を中心としたシステムでは、DOE(米国エネルギー省)が自動車用として2015年の開発目標値として設定している0.2g/kWが仮に達成されてとしても、乗用車1台あたり20グラム前後の白金を使用することになり、世界の自動車生産台数を考えると資源の量としても大きな制約があり、かつ使用量が増加することによる投機対象資源としても注目されるため、価格の増加や変動の一因ともなりうることから、定置用燃料電池しすてむにおいてもその影響を強く受けることになる。このような背景のもとで、戦略的大学連携支援事業における研究活動の一環として、初年度からPEFCの作動温度を高める要素材料の開発とシステム化、および白金を使用しないか使用料を軽減する電極触媒の開発課題を設定し研究に取り組んでおり、次のような研究課題を実行してきた。(1)最大150℃作動を目標とする中温動作電解質膜の開発と評価a.リン酸基と硫黄基を持つ新電解質膜の開発(PEFC用)b.超微粒子分散系電解質膜の開発(DMFC用)(2)アロイコア構造、コアシェル層構造を持った二元金属ナノ粒子や有機金属錯体であるFeおよびNiのsalen錯体などを用いて白金使用量を軽減した高性能触媒の開発(3)新開発素材を用いたMEA調製のシステム化と性能劣化等の解析・評価手法の開発2.1 リン酸処理石膏をプロトン伝導体とした 中温動作電解質膜の研究2.1.1 研究の背景本研究では、2006年にプロトン伝導性が報告されたリン酸処理石膏をプロトン伝導体とした電解質膜の研究を行っている。石膏は硫酸カルシウムの半水和物(CaSO4・0.5H2O)で水と反応することで2水和物(CaSO4・2H2O)となり固化す定置用燃料電池の要素技術課題解決東京都市大学 工学部 特任教授 高木 靖雄/教授 永井 正幸/教授 小林 光一技術開発のスコープ1新しい電解質膜の開発2■ 教育研究部会 活動報告 研究小委員会連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会55

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