平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
58/350

ることから、建材や工作用途などに広く使われている。石膏自体にはプロトン伝導性は無いが、石膏をリン酸水溶液で硬化させたリン酸処理石膏は無加湿条件下で室温から300℃までの広い温度範囲において高いプロトン伝導性を示すことが明らかになっている。2.1.2 リン酸処理石膏の特性と作製法の研究(平成20年度)本研究では、150℃の動作環境でも高いプロトン伝導性を維持するリン酸処理石膏の注目した。これをグリシドキシプロピルトリエトキシシラ(GPTES)、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラ(GPMDES)を用いて複合化した薄膜を作製しその電池特性を評価した。これらは、ゾル-ゲル法によって膜状に形成でき作製した膜はGPTESの特性によって三次元的な構造を持ち、GPMDESの直鎖系重合によって柔軟な膜となる。複合膜の耐熱温度は160℃であり、目的とする150℃付近の温度領域に耐えられることが分かっている。リン酸処理石膏-GPTES 系電解質膜の作製は、17wt%リン酸水溶液と焼き石膏の粉末を1対1の重量で混合させたものを80℃で一週間乾燥させ、これを200℃で熱処理することでリン酸処理石膏を作製した。複合化に関しては、GPTES,GPMDES,2-プロパノールを攪拌したものに60wt%のリン酸処理石膏を加え、さらにここに1mol/lの塩酸を加えて7日間攪拌した後、80℃で乾燥させることで行った。作製した試料について、フーリエ変換赤外分光分析法(FT-IR)によって内部構造の評価を行い、膜電極接合体(MEA)を作製し、燃料電池特性評価試験を行った。リン酸過剰処理による電気伝導率の影響については、次のことがわかった。使用した焼き石膏の重量に対して、過剰量のリン酸水溶液を使用してリン酸処理石膏を作製することで電気伝導率に影響が出るかを検討した。焼き石膏とリン酸水溶液を30分間攪拌し、これを濾過したものを200℃で熱処理することで過剰リン酸処理石膏を得た。今回、焼き石膏に対して1~6倍の過剰度について検討し、上記と同様の方法で膜化したものを交流インピーダンス測定により測定した室温大気中における電気伝導率を図1に示す。無加湿条件下で、10-4S/cmの非常に高い電気伝導率を示すことが分かった。作製した膜のFT-IR測定結果より、GPTES,GPMDES に由来するシリカ類似構造と、エポキシ開環による有機鎖状構造の導入が確認された。1000cm-1付近のCH2を含む結合とCaSO4由来のピークの中にはHPO4のピークも混在している。膜内にこれらの結合が見られたため複合化はされている事が推測できる。作製膜の電池特性評価は、次の通りである。MEAにおける触媒層として、プロトン伝導体としてのリン酸処理石膏と白金を混合させたものを使用した。測定結果から、約0.8Vの開回路電圧が得られ、最大電流密度約65mA/cm2の時最大出力密度約20mW/cm2が得られた。電圧が0.5V程度になるまで電流値が生じなかったのは、触媒中の白金の反応が不十分であったことに起因していると考えられる。改善の方法としては、触媒層中の白金・リン酸処理石膏の組成を変化させることで触媒層からプロトンを効率よく生じさせ、膜内へと伝達できるように十分に三相界面を形成させることが考えられる。2.1.3 電解質膜の作製と特性の評価(平成21-22年度)リン酸処理石膏の問題点として、石膏が針状結晶であるためにガス遮断性がなく燃料が透過することと、柔軟性に欠けるため衝撃に弱いこととがある。平成21年度、22年度では、リン酸処理石膏をイオン伝導体として用い、シリコーン系の基材を複合化することで柔軟性とガス遮断性を付与した無機・有機複合電解質膜の開発を試みた。リン酸処理石膏を変性シリコンオイル及びシランカップリング剤と混合し、得られた粉体を減圧条件下で加熱加圧図1 リン酸と焼石膏の比率と電気伝導度連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会56

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です