平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
59/350

することで平板状の試料を得た(図2)。得られた電解質膜は2.7×10-4S/cmのイオン伝導性を示し、燃料電池運転試験中の空気極排ガス中に水素ガスが検出されなかったことからガス遮断性も獲得できたと考えられる。電極に炭素担持白金触媒粉末とリン酸処理石膏粉を混合した圧粉体電極(図3(a))およびナフィオン溶液を炭素担持白金触媒のバインダーとした電極(図3(b))と組み合せた直径約9mmのMEAを作成し燃料電池性能評価も平行して行った。現時点で、ナフィオンバインダー電極との組み合わせにより11 mW/cm2の出力密度が得られた(図4)。その時の電流密度は24mA/cm2で、解放電位は0.84Vであった。ただし、同図で示す作動温度条件である25℃以上では温度上昇とともに出力が低下する傾向があるため、この課題解決は今後の課題である。ただし、110℃まで無加湿条件下にて起電力が得られることが確認できた。今後の課題としては、更なる導電率の向上が挙げられる。実用化の基準をパーフルオロスルホン酸系高分子膜の導電率である10-2S/cmオーダーとすれば、この数値の達成が目標となる。リン酸処理石膏は既報では10-2S/cmの導電率が得られているため、本開発試料は膜の基材と複合化させることで導電率が低下したと考えられる。現在、プロトン伝導性を持つリンケイ酸塩系材料を基材として膜を作成しているが、複合化時に石膏とリンケイ酸塩のそれぞれのリン酸の量の変化が起こり導電率が低下するなどの問題が発生している。今後は試料内部のリン酸石膏・基材それぞれのリン酸の状態を観察することで、性能向上への指針を得ることを目指している。中温動作形燃料電池のもう一つの大きな課題は電極作成手法の開発にある。現行のPEFCでは電解質膜材料であるパーフルオロスルホン酸系高分子を有機溶剤に分散させた分散液を触媒の結着と電極内部のイオン伝導を担うイオノマーとしている。現時点では非常に高い性能が得られているが、水の沸点以上の温度領域では電解質膜と同様に性能が低下する。そのため、中温動作形燃料電池のための電極の開発も大きな課題となっている。電極では、電子の移動・イオンの移動・燃料等の物質移動の3者を共存させる必要があるため、緻密である必要のある電解質膜とは異なる作成手法が必要である。我々のグループではリン酸石膏系電解質膜と併用することを検討している。2.2 アルカリ膜形燃料電池用新規電解質膜の開発2.2.1 研究の背景白金の使用量を軽減した触媒の開発と並行して白金に代わる金属をベースにした電極触媒の開発に力が入れられている。このような卑金属をベースとした触媒を使用する図2 リン酸処理石膏複合膜の平板状試料(a) リン酸処理石膏圧紛体電極 (b)ナフィオンバインダー電極図3 性能評価に用いた電極図4ナフィオンをバインダーとした炭素担持白金触媒電極とリン酸処理複合膜用いた燃料電池性能(25℃、無加湿作動)連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会57

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です