平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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際の大きな障害は、これまでのPEFCでは、電極が強酸性雰囲気となるため電極触媒を含めて電極に使用される材料の腐食である。このことがこれまでのPEFCの開発が白金触媒を中心として進められたもう一つ理由である。この問題を解決するために、電解質膜の電荷担体をPEFCの水素イオンH+から水酸化イオンOH-とするためにアニオン交換膜を用いるアルカリ膜形燃料電池AMFCの研究が始められている。アルカリ水溶液を用いていた従来のアルカリ形燃料電池AFCと区別するために、AMFCと呼称する。2.2.2 アルカリ膜形燃料電池用電解質膜の作製と 初期特性の評価(平成20年度)AMFC電解質膜として、本学のグループではポリシロキサン構造を主骨格とし、アミノ基を水酸化物イオン伝導経路としたシリコン系のイオン伝導膜を試作し評価した。膜の構造は図5に示すようにポリジメチルシロキサン構造の末端のエポキシ基がアミノ基と反応し、アミノシランのシリコン原子が他のアミノシランのシリコン原子とシロキサン結合を形成している。水酸化物イオン伝導はエポキシ基-アミノ基結合部位の1、2級アミノ基が水を解離させることで生じている。製膜した膜の外観を図6に示す。導電率は0.1mS/cmの低い値であった。また、燃料電池出力評価試験による0.76mW/cm2の出力を得ることができた(図7)。導電率が低い原因は、膜のアミノ基が4級アンモニウム化されていないことが原因であると考えられ、今後の性能向上の改良点である。 2.2.3 アルカリ膜形燃料電池用電解質膜の改良 (平成21-22年度)低い導電率を改善するために、膜のアミノ基の4級アンモニウム化を進めた構造の新しいアルカリ膜形燃料電池用電解質膜の検討を進めた。 得られた薄膜試料のイオン交換容量は0.74mmol/gであり、パーフルオロスルホン酸系高分子膜として代表的なデュポン社のナフィオンの70%に相当する。試料膜のイオン伝導率は1.7×10-4S/cmであり、5重量%のメタノール水溶液を燃料とした燃料電池試験において現時点では0.04mW/cm2の出力密度が得られている。本試料膜とパーフルオロスルホン酸系高分子膜とを比較した場合、両者のイオン交換容量の比以上に導電率が低いことが明らかになっており、これが低出力の原因である。この理由としては、膜内でイオン交換基が連続した構造をとっていないことが考えられる。さらに電解質膜の抵抗の大きさも出力密度の低さの主因であると考えられる。出発物質の構造から考えた場合、本試料膜のイオン交換容量の増大が可能であるため、合成条件の改良によるイオン交換容量の増大を現在継続して行っている。イオン交換容量の増大の後に、膜内のイオン伝導経路の改良による導電率の向上を検討する予定である。電極イオノマーへの展開は、電解質膜の前駆体溶液を用いてPEFC系と同様の手法で電極を試作している。また、PEFC系の電極作成手法より指針を得つつ性能向上を目指す。図5 試作アルカリ膜の構造推定図図6 試作アルカリ膜外観写真図7 試作膜を用いたアルカリ膜型燃料電池評価試験結果連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会58

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