平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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劣化を示した部位を判定することが必要がある。このために本プロジェクトにおいて、作動中のMEAを非破壊で診断することのできる交流インピダンス法(ACIS)に、分布定数型等価回路(TLM)を組み合わせたTLM-ACISを新たに開発し、MEAを構成する電解質膜、触媒層内電解質および触媒層内の炭素層の機能低下であるインピダンス増加を分離計測できるようにした。この手法は、ACISで測定したNyquist線図に、図20に示す分布定数型等価回路(TLM)を適用して構成パラメータの値をカーブフィッティングによって求める手法である。この手法の特徴は、MEAを構成する主要要素と等価回路構成要素の対応が容易であり、同図に示すように左端が電解質膜、右側要素の上部が触媒層内電解質膜、下部が炭素部を表す。また、同図に示すように触媒層を複数のセグメントに分割することによって、触媒層内厚さ方向のインピダンスすなわち機能変化の分布も表現できることである。触媒層内厚さ方向の劣化分布の診断に関しては、アニーリング温度を高め性能低下を意図的に引き起こした電解質層を厚さ方向に配置したMEAを調製し、分離して計測できることはすでに検証済である。5.2.2 TLM-ACIS法のカソード触媒層内電解質厚み 方向の性能劣化診断への適用例TLM-ACIS法を、氷点下起動繰り返しにより性能劣化を生じたMEAのカソード内触媒層電解質が、MPL側より電解質膜側のインピダンス増加が高いことを解明した結果を、本手法の適用例として示す。図21(a)に示すように、TLM-ACIS法の適用によりまず氷点下起動の繰り返しにより生じる性能劣化部位は、電解質膜でもカソード触媒層内の炭素でもなく電解質であることを分離診断した。次に図21(b)に示すように、性能劣化は触媒層内の電解質膜側(RI,MEMで表示)の方がMPL側(RI,MPLで表示)より繰り返し回数の増加に対応して増加していることが診断されており、この結果は触媒層の電解質膜側の細孔状態の変化がMPL側より大きいことでも裏付けされている。 5.2.3 結論● 新しく開発した中温動作電解質膜を、セミ電極化しMEA化した場合の初期特性を評価し、その結果をフィードバックした。● 性能評価および劣化特性評価に用いることのできるMEA構成部位のインピダンスを分離して計測できる診断法を開発した。5.3 分割電極セルによる出力分布診断法の開発(平成20年度)新しく作製したMEAが面内で均一に発電を行っているかどうかを診断するために、また性能劣化が生じた場合にMEA面内の劣化分布を計測するために、発電分布を計測する分割電極セルを開発した。本分割電極セルの特長は図22に示すように、セパレータのみを9分割する方式であ(a)カソード触媒層内電解質の性能劣化を示す適用例図21 TLM-ACISのPEFCの氷点下起動の繰り返しにより生じる性能劣化部位の特性診断への適用例(b)カソード触媒層内電解質の電解質膜の性MPL側より進行している診断的用例図20 分布定数型等価回路(TLM)の構成図連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会64

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