平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
80/350

組織写真である。合金溶解後、るつぼごと水冷した試料では初晶と共晶の両組織とも微細であるが、炉冷により冷却速度を遅くした試料では初晶Mg相が粗大となり、共晶相も成長している。さらに冷却速度を遅くすると初晶Mg相は大きいままであるが、共晶相中のMgNi相が球状化した。これらの熱処理を施した試料の水素吸収量の時間依存性を調べた結果を図3に示す。水素化測定の1サイクル目において、水冷材はほとんど水素を吸収しないが、冷却速度を遅くするにつれて水素の吸収は速くなることがわかる。水素化測定の5サイクル目では、いずれの試料とも5分以内で初期水素化はほぼ終了するが、その後も徐々に水素を吸収し続ける。また、これらの試料は同じニッケル含有量であるにもかかわらず水素吸収量は熱処理に依存し、材料組織が小さい場合は水素吸収量が少なく、粗大な材料組織の試料ほど吸収量が多いことがわかった。最大水素吸収量は、冷却速度の最も遅い試料で4.8mass%の値が得られた。これは期待した値よりも少なく、この原因として水素吸収速度が遅く水素化が十分に行われていないためと考えられた。そこで、次にニッケル添加量をさらに増加させた過共晶Mg-Ni合金試料を作製し、水素化特性におよぼすニッケル添加量の影響を調べた。図4に水冷により凝固させた過共晶Mg-Ni合金のSEM組織観察結果を示す。初晶MgNi相は粗大に析出しており、ニッケル添加量が増加するにつれて初晶MgNi相の割合が増加する。また、共晶Mg-MgNi相は100nm程度の相間隔で析出しており、微細な組織となることがわかった。これらの合金粉末の水素化速度の測定結果を図5に示す。水素化測定の1サイクル目において、Mg-31mass%Ni合金では水素の吸収速度は遅いが、ニッケル添加量の増加とともに水素吸収速度が増加していくことがわかる。水素化測定の5サイクル目では、いずれの試料とも2分程度で水素の吸収がほぼ終了しており、活性化速度が十分になされていることがわかる。また、その後の水素吸蔵量の変化も少なく、水素吸収はほぼ終了しているものと考えられる。最大水素吸蔵量はニッケル添加量の増加ととともにMg-31mass%Ni合金の5.5mass%からMg-50mass%Ni合金の4.2mass%へと減少していくことがわかった。次に、第3元素の添加による水素放出特性の向上について調べた。このためにはマンガンの添加が有効であることが分かったので、これを添加した合金を溶解し、作製して水素化特性を調べた。作製したMg-30.8mass%Ni-0.2mass%Mn合金のSEM組織写真を図6に示す。この試図3 亜共晶Mg-14.8mass%Ni合金の水素吸収曲線図6 Mg-30.8%Ni-02%Mn合金のSEM組織写真図4 過共晶Mg-31mass%Ni, Mg-41mass%Ni, Mg-50mass%Ni合金のSEM組織写真図5 過共晶 Mg-31mass%Ni, Mg-41mass%Ni, Mg-50mass%Ni合金の1サイクル目と5サイクル目における水素吸収曲線 連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会78

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です