平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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さらに、攪拌翼の形状が反応温度40~60℃での誘導期に与える影響についても検討した。攪拌翼には図4に示す形状のものを用いた。その結果、反応温度が40~50℃では試作プロペラを使用することで誘導期を短縮することができたが、60℃での誘導期はオリジナルのものと同等であることがわかった。これは、反応温度が低いと攪拌効率が誘導期に対して強く影響を及ぼし、反応温度が高いと攪拌の影響は弱くなることを意味している。3.3. 平成22年度の研究成果3.3.1. 小型ステンレス製反応器を用いたAlとH2Oからの H2生成反応次に反応温度と誘導期との関係について検討した結果を図5に示す。反応温度を30℃から60℃まで上昇させることで誘導期は著しく減少するが、60℃以上ではあまり変化しなかった。したがって、反応温度は60℃付近が最適であると考えられる。また、反応温度の上昇により誘導期が短縮した原因は、Al粒子表面に存在する酸化被膜の欠陥部分で水との反応が進行するためと推測される。さらに、Al量が誘導期とH2生成速度に与える影響についても検討したが、Al量が増えても誘導期はほとんど変化しなかった(図5)。これより、誘導期に対するAl量の影響は非常に小さいといえる。一方、反応8時間におけるH2生成速度を図6に示す。Al量が増加することによってH2生成速度は上昇することがわかった。したがって、H2生成速度はAl量により制御することが可能であると考えられる。反応により生成したH2を高圧で貯蔵する方法についても検討を行った。10gのAlおよび80mlのH2Oを用いて60℃で反応を行ったところ、反応時間8時間後には10.8MPaのH2を反応器内に貯蔵することができた。これより、本法は直接H2の製造および高圧貯蔵を可能にする新しいH2の製造法になると考えられる。3.3.2. 大型ステンレス製反応器を用いたAlとH2OからのH2生成反応反応器の容積を小型(100ml)から大型(2,000ml)に変更し、スケールアップについて検討した。図7に100gのAlおよび400mlの水を用い反応を行った結果を示す。実験条件は撹拌速度1,200rpmおよび小型反応器で誘導期の短かった反応温度60℃とした。これより、誘導期は非常に短く、これまでと同様の傾向で反応を行うことが可能であることが明らかとなった。さらに、H2生成量、誘導期およびH2生図5 AlとH2Oとの反応の誘導期に与える反応温度とAl使用量の影響図4 攪拌翼の形状(a)オリジナル(b)試作品(30°)(c)試作品(40°)図6 H2生成速度に与える反応温度とAl使用量の影響(反応8時間後)図7 AlとH2Oとの反応によるH2生成(●) Al粉末 (100g, H2O 300ml), (▲) 廃Al (40g, H2O 1,400ml).連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会82

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