平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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本稿では今回の連携事業のうち、航空宇宙分野に関する内容について行われた共同研究についてまとめる。この共同研究はまず室蘭工業大学からの呼び掛けにより宇宙用スターリングサイクル発電機の研究としてスタートした。宇宙機の実状に詳しい東京都市大学側の研究者と、スターリングエンジン研究に実績のある室蘭工業大学側の研究者が協力することにより、宇宙用スターリングサイクル発電機研究の活性化を図った。その後相互の訪問、打合せ等を重ねていくうち、新しいテーマとして室蘭工業大学所有の飛翔体高速走行実験用のレールを用いて東京都市大学開発の液体窒素ロケットを地上走行するという研究も立ち上がっている。以後、これらの2つのテーマについてこれまでに得られた結果をまとめる。2.1 スターリングサイクル発電機の優位性スターリングエンジンはディーゼルエンジンなどと異なり燃料の吸気や排気を必要としない外燃機関である。外部からの熱の供給により作動させることができるため、宇宙空間において太陽熱を集熱して供給することで宇宙機用の発電装置として利用することができる。現在のところ宇宙機の発電装置としては太陽光発電パネルを用いたものが主流であるが、スターリングサイクル発電機を用いた場合高い熱効率が期待できる他宇宙放射線に強いなどのメリットがあり、場合によっては太陽電池を用いた発電方法より有利になる可能性がある。特に文献(1)等に述べられている通り、スターリングサイクル発電機は発電量の増加とともに単位質量当たりの発電量が大きくなる傾向があり、宇宙ステーションや発電衛星、月面基地などのミッションで優位性を発揮できると思われる。2.2 地上実験による性能評価2.2.1 概要 室蘭工業大学は、過去に宇宙用として開発されたスターリングサイクル発電機とその実験設備を有している。本研究ではこれを用いてスターリングサイクル発電機の特性を調査する地上実験を行った。特に着目した点としては(1)作動流体の違いによるエンジン性能の変化、(2)発電機に接続する負荷抵抗の大きさの違いによるエンジン性能の変化、の2点である。(1)についてはスターリングエンジンでは水素などの軽量な気体を作動流体として用いることでエンジンの性能が向上するという報告があり(2)、本研究でも水素ガスを用いた運転を行い他のガス(ヘリウム・窒素)を用いた場合との比較を行うものである。また(2)については、負荷抵抗を変化させることにより発電出力の最適化を図るものである。2.2.2 実験装置 本研究で用いたスターリングサイクル発電機の外観図を図1に示す。本発電機は出力を取り出すためのパワーピストはじめに1宇宙用スターリングサイクル発電機の研究2宇宙用スターリングサイクル発電機の研究室蘭工業大学 大学院講師吹場 活佳室蘭工業大学 大学院特任教授 棚次 亘弘東京都市大学 工学部講師渡邉 力夫■ 教育研究部会 活動報告 研究小委員会図1:スターリングサイクル発電機外観図a) 外観b) 断面図連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会86

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