平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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最近の地球温暖化に関連した環境問題やエネルギー問題の解決には、水素などのクリーンエネルギーや様々な再生可能エネルギーの技術開発と、エネルギー利用効率を向上させるための技術開発の両方が重要と考えられる。超電導材料はエネルギー損失無しで電気を流すことができるため、高効率な送電や電子デバイスの実現に大きく貢献する材料の一つである。しかし、これまで超電導の応用に使われてきた超電導材料は超電導転移温度Tcが低く、超電導材料を液体ヘリウム温度(約マイナス269℃)程度に冷却する必要があった。近年、銅酸化物やMgB2等の高いTcを持つ超電導体(高温超電導体)の応用研究が大きく進み、高温超電導体の幅広い実用化が期待されている。高温超電導体では超電導に対する不純物の効果やディスオーダーの影響が従来と異なることが報告されているため、それらについて詳しく調べておくことは高温超電導を応用していく上で大変重要である。 従来の超電導体と大きく異なる不純物効果の一つとして、ZnやNiなどの不純物を少量添加したBi系銅酸化物高温超電導体(Bi2212)における不純物効果がある。不純物を添加したBi2212では、Tcがまだ十分高いにもかかわらず、超電導を特徴づけるエネルギーギャップ(超電導ギャップ)が空間的に著しく不均一になり、その不均一さを特徴づける長さは超電導のコヒーレンス長と同程度になる。従来型の超電導体では、このような場合にTcがかなり抑制されるが、Bi2212ではTcはほとんど抑制されていない。この不均一な電子状態が本質的に高温超電導の発現メカニズムに関連している可能性が指摘されており、大きな関心を集めている。また、この不均一な電子状態は、電荷とスピンがストライプ状に配列する新奇な秩序状態と関連している可能性も報告されている。また、MgB2ではメカニカルミリングにより系統的にディスオーダーを導入していくと、元々の超電導転移温度よりも低温で新たな超電導相が現われることが報告されており、その超電導の起源に興味が持たれている。 このような銅酸化物やMgB2における新奇な不純物効果やディスオーダー効果の起源を明らかにすることは、高温超電導の応用上重要である。本研究プロジェクトでは、超電導に対する新奇なディスオーダーの効果を系統的に明らかにすることを目指し、下記のテーマで研究を行った。また、本研究では不純物やディスオーダーが導入された不均一な試料に対して超電導特性の場所依存性などを評価することが大変重要であり、磁界分布などの測定に適したマトリクスセンサシステムについても研究を行った。 (1)�Bi系銅酸化物超電導体(Bi2212)における不純物効果 (2)�La系銅酸化物超電導体(LNSCO)におけるディスオーダーの導入とストライプ秩序 (3)�希土類化合物超電導体CeRu2における構造不規則性の導入による効果 (4)�希土類化合物超電導体CeRu2Si2におけるCeサイト置換効果 (5)�希土類硫化物α-R2S3(R=Gd, Tb, Dy)の磁気相転移におよぼす圧力効果 (6)スピネル型硫化物における元素置換効果 (7)磁界分布の時間変化を捉える二次元センサシス テムの開発 以下で報告する研究は東京都市大学と室蘭工業大学の下記のメンバーで行った(メンバー名の後ろの数字は、上記の研究テーマの中で主に関わったものの番号である)。桃野 直樹(代表、室蘭工業大学、しくみ情報系領域)・・・(1)(2)(7)鳥居 粛(代表、東京都市大学、電気電子工学科)・・・・(1)(2)(7)永田 正一(室蘭工業大学、しくみ情報系領域)・・・(5)(6)戎 修二(室蘭工業大学、しくみ情報系領域)・・・(5)(6)村山 茂幸(室蘭工業大学、しくみ情報系領域)・・・(3)(4)髙野 英明(室蘭工業大学、しくみ情報系領域)・・・(2)(3)(4)酒井 彰(室蘭工業大学、しくみ情報系領域)・・・(1)(2)銅酸化物超電導体及び金属間化合物超電導体における新奇なディスオーダー効果に関する研究■ 教育研究部会 活動報告 研究小委員会室蘭工業大学 大学院 准教授 桃野 直樹東京都市大学 工学部 准教授 鳥居 粛研究目的1連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会91

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