平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
96/350

純度99.9%のCeとRuを秤量し、トリアーク炉を用いてAr雰囲気中で母材となるCeRu2を作製した。その後、試料を真空中900℃で100時間のアニール処理を施した。構造不規則性の導入は粉砕型ボールミル容器を用いてHe雰囲気中でのメカニカルミリングを25~500時間まで段階的に行った。粉末X線回折測定により各試料の結晶構造を評価し、SQUID磁化測定装置により印加磁場50Oe、温度範囲2-300Kで磁化の温度依存性を調べた。X線回折測定の結果から、目的となる試料が出来たことがわかった。様々なミリング時間におけるX線回折パターンを系統的に調べた結果、ミリング時間が長くなる毎に回折ピークの強度が減少し、線幅が広がることが分かった(図3)。これらの原因として、結晶子径の減少が考えられ、構造不規則が導入されていると判断できる。磁化測定ではミリング試料の25-150時間において超伝導に伴う反磁性が確認され、Tcはミリング時間による変化は見られず、反磁性磁化はミリング時間とともに減少することが明らかになった。(4)重い電子系(Ce1-xLax)Ru2Si2の電気抵抗と磁性 重い電子系超電導体の一つであるCeRu2Si2は、中性子回折実験からCeサイトへの8%以上La置換によりa軸方向に不整合な波動ベクトルを持つsin波磁気構造が出現することが見いだされている。20%以上の置換ではsin波のsquaringが観測されている。本研究では、CeRu2Si2 超電導体の電子物性を明らかにするため、関連物質である(Ce1-xLax)Ru2Si2の単結晶を作成し、磁化測定、電気抵抗測定から電気的性質および磁気的性質について系統的に調べた。(Ce1-xLax)Ru2Si2の単結晶試料はCzochralski法により作製し、800℃で一週間アニールを行った。磁化率はSQUID磁化測定器を使用し、温度範囲2~300K、印加磁場5,000Oeで測定した。電気抵抗は3He cryostatを用い4端子交流法により温度範囲0.4~300Kで測定した。x=0.2の試料における電気抵抗の温度依存性を図4に示す。c軸平行方向の電気抵抗率では、5.5K付近で反強磁性に由来するカスプが確認された。このカプスからネール温度をTN=5.5Kとした。一方、c軸垂直方向の電気抵抗ではTNよりやや高温でブロードな極大が観測されたが、TN付近では大きな異常は観測されず、2K付近で折れ曲がりが観測された。この折れ曲がりは、sin波のsquaringが始まる温度とほぼ一致する。La濃度xを系統的に変えて同様な測定を行い、TNのx依存性を明らかにした。この研究により(Ce1-xLax)Ru2Si2系の特異な磁気相図が明らかとなった。(5)希土類硫化物α-R2S3(R=Gd,Tb,Dy)の磁気相転移におよぼす圧力効果 関連物質に新奇な超伝導体を持ち、特異な磁気相転移を示す希土類硫化物α-R2S3(R=Gd,Tb,Dy)の磁化への圧力効果について詳細に調べた。図5-1、図5-2にα-Dy2S3単結晶のb軸およびa軸方向磁化の温度・圧力依存性を示す。b軸方向磁化は常圧下では11.5KでDy1サイトモーメントの反強磁性転移に伴うカスプを示すが、これが圧力により低温にシフトしている。また、磁化が急減に転じる温度は圧力によらず6.9Kであるが、0.8GPa以上図3図4連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会94

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です