平成22年度 戦略的大学連携支援事業 活動報告書
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の高圧下ではこの温度で明瞭な屈曲を示すようになる。α-Dy2S3やα-Sm2S3の針状単結晶において、a、c軸方向磁化の特徴が、試料によって逆転する現象が1mm程度の径を有する大きな結晶で見られることが時々ある。今回得られた試料では、a軸方向磁化の強磁性的な立ち上がりが大きかった。圧力印加により磁化が減少に転じる温度が低下し、弱強磁性の温度範囲が拡大した。この振る舞いは、b軸方向磁化の磁化急減過程のわずかなふくらみとして観測されている。この磁気相転移に付随する伝導異常に関する圧力効果は、機構解明につながる今後の課題である。(6)スピネル型Cu(Ir1-xMx)2S4(M=Sn,Hf)の金属-絶縁体転移 スピネル型硫化物CuIr2S4の電気抵抗率と磁化率の温度依存性を図6-1に示す。金属‐絶縁体(M-I)転移が226Kでおこる。この転移はIrの電荷配置が低温で秩序化して凍結することに起因する。本研究ではスピネル型のB-サイトに注目し、IrをSnおよびHfで置換したCu(Ir1-xMx)2S4 (M=Sn、Hf)を合成した。SnとHfの置換が金属-絶縁体転移に及ぼす影響を磁性の面から調べることを目的とする。 試料は固相反応法で合成を行い、低濃度領域に注目しSQUID磁束計で磁化率を測定した。 CuIr2S4はT>226Kの領域で温度に依存しないパウリ常磁性を示し、T<226Kでは原子芯による弱い反磁性を示す。 図6-2、図6-3にCu(Ir1-xMx)2S4(M=Sn、Hf)の外部磁場H=1.0kOeでの磁化率(χ=M/H)の温度依存性を示す。M-I移転点はSn、Hf置換により低温側にシフトする。置換量x=0.10~0.20付近で磁化率のスッテプ状の変化が消失する。低温相の磁化率の値が負から正の向きに変化する傾向が見られる。T<50Kでの磁化率の増大は物質固有の性質とは考えていない。 CuIr2S4の低温相ではB-サイトにおいてIr4+-Ir4+のspin-対(S=0)の形成により、磁性は消失し同時に絶縁体になる。Ir4+-Ir4+対の片方のIr4+がSn4+、Hf4+で置換されるとspin-対は破壊される。対を形成するために対の原子間隔が縮んでいる。対の破壊によりこの縮みがなくなり元の間隔に戻る。この戻りにより、 電子は結晶内で移動しやすくなり試料は金属的な磁性を回復する傾向をもつ。 以上より、スピネル型硫化物の金属-絶縁体転移に対する元素置換効果のメカニズムが明らかとなった。図5-1 α-Dy2S3単結晶の高圧下磁化(H//b)図5-2 α-Dy2S3単結晶の高圧下磁化(H//a)図6-1 CuIr2S4の金属-絶縁転移連携推進委員会 活動報告教育研究部会 活動報告大学運営部会 活動報告地域連携部会 活動報告評価委員会95

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